Monday, June 25, 2007

山頂より:その4/a peek from the peak #4.

WTO(世界貿易機構)や自由貿易協定や経済連携協定の締結といった形で貿易の自由化の促進が声だかに呼びかけられてます。いま、それがもたらす影響について、ひとつ書いているところですが、日本の大手マスコミの論調はひどい。まったく時代認識に欠けてますねえ。

たとえば、今日の東京新聞の社説はこうですよ。

「自由貿易体制強化への動きを止めてはならない。日本は事態打開へ積極的に汗を流すべきだ。」貿易の自由化で、関税など農産物の国境措置が撤廃されれば、農業への打撃が予想されますが、それについて同紙社説は「痛みは避けて通れないが、むしろ、意欲のある担い手育成などの好機ととらえて自由化がもたらす痛みを克服する」べきであると結論しています。

この無知さ加減はまったく何なんだろう。
こうした論調は日本のマスコミに共通しているようですが、正直、あきれてしまいます。

いま、自分たちが呼吸するのがどういう時代であるのか、何を口にして生きているのか、これから何を食って生きていくつもりなのか、そういう時代認識、歴史認識がまったく欠けています。

拙著やこのブログを読んでいる人には聞き飽きたことかと思われますが、人類は「ふたつの大量破壊兵器」に直面しており、現代人の生存は食料確保にかかっている。んなことは、まったく理解できていないようです。「避けて通れない」のは他人の痛みじゃないんすよ。あなたの空腹ですよ。一体、何喰って生きてくつもりなんでしょう。食料がどこでどんなふうに生産され,流通するのか、それを考えようともせず、空虚なアジテーションをする人間に報道人の資格はありません。

今日の東京新聞社説に代表される日本のマスコミに比べると、大手マスコミでは世界で初めて、今月、オイル・ピークを一面で、しかもマジで取り上げたイギリスのインデペンデント紙は6月23日付けで「世界は食料紛争に突入」という記事を載せています。

ダニエル・ハウデンの記事は、なぜ、バイオ燃料への需要が増しており、これからも増していくのか、その背景にオイルピーク(=チープオイル時代の終焉)があることには言及しておらず、その意味では突っ込みが今ひとつたりませんが、「安い食料(チープフード)」時代の終焉を認識し、そのしわ寄せがどこに行くのか、それを取り上げている点は重要です。

貿易の自由化がどんな社会をもたらすのか。これから何を食べていくつもりなのか、誰を餓死させるつもりなのか。我々の生きているいま、それを理解する一助として、インデペンデント紙の記事を下記に抄訳します。

(ちなみに、記事の中に出てくる世界穀物備蓄、53日分にまで下がるだろうとする予測もあります。ちょっと、出典がどこだったのか、見つからない!アブラのピークが食料ピークやその他のピークに連動していることは間違いありません。そこが、オイルピークの核心です。)

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英国では穀類の価格が去年1年で12パーセント上昇し、世界市場における乳製品は60パーセ ント値上がりした。「安い食べ物(チープフード)」の時代は終わりに達しているのかもしれない。

戦後育ちの我々は、食品価格というものは下がるものだとばかり思い込んできた。60年前、英国の平均的な家庭は収入の1/3以上を食費につぎ込んでいた。現在では食費の家計に占める割合はその1/10だ。

ところが農産品の価格はここ数十年で初めて、急騰しており、どこまで上がるのか、アナリストにも予測できない。

この現象は農業とインフレーションを合成しアグフレーションと呼ばれている。「安い食べ物」を過去のものとするアグフレーションにはおもに2つの理由がある。食料需要そのものの増加、そして、農産物の代替エネルギー資源への転用だ。

中国とインドでは自分たちの両親が食べていたようなものでは満足せず、より多くの食肉を要求する新富裕層が何百万人という規模で生まれており、食物の需要を押し上げている。そしてその一方で、食べられる農産物をアブラの代わりにエネルギー源として使う、いわゆるバイオ燃料の需要が増加している。

コメの価格は世界中で上昇中だ。ヨーロッパにおけるバターの価格は昨年、40パーセント上昇し、小麦の先物は、この10年間で最高値で取引される。大豆の世界価格は5割上昇、中国における豚肉価格は昨年にくらべ20パーセント上昇、インドの食料品価格指数は11パーセント上昇した。メキシコでは、トルティーヤの値段が60パーセント上がり、暴動を引き起こした。

18世紀の英国の思想家、ロバート・マルサスは世界人口の成長が、食物生産能力を追い越し、大量の飢餓になるだろうと予測したが、それを思い起こさせる現状だ。

英国では小売業者の競争のおかげで、消費者はこれまで、食品価格上昇の初期の影響から遮断されてきた。しかし、スーパーマーケットはいつまでも、価格上昇を抑えることはできない。欧州委員会には、市民を保護するだけの備蓄はいまや、残されていない。共通農業政策という改革が、バターや食肉、粉乳の売れ残りをすべて、吐き出してしまったからだ。

そしてトウモロコシだ。

トウモロコシはそのまま消費される量は比較的小さいが、間接的には、食品経済の中で、莫大な量が消費される。牛乳、卵、チーズ、バター、チキン、牛肉、アイスクリームにヨーグルト、平均的な家庭の冷蔵庫にあるこれらの食品はすべて、トウモロコシが生産に使われており、トウモロコシの価格に左右されるのだ。冷蔵庫は、いわば、トウモロコシであふれているのだ。

トウモロコシの価格は過去12ヵ月で二倍にはねあがった。農業の狙いは次の収穫時まで、十分な食物を生産することにある。世界の穀物生産は 過去7年のうち6年、消費を下回った。そのおかげで、世界穀物備蓄は57日まで減少してしまった。これは、ここ34年間で最低のレベルだ。

価格上昇の原因は、トウモロコシがエタノール生産に振り向けられているからだ。米国では来年の穀物収穫の30パーセントが、エタノール蒸留所に直行する。米国が世界で取引される穀物の2/3以上を供給していることを考慮すれば、この先例のない動きは世界各地で食品価格を押し上げている。ヨーロッパでは、エネルギー・ミックスにおけるバイオ燃料の割合を20パーセントにしようというEUの目標達成のため、農民がエネルギー作物の生産に血眼になっている。

バイオ燃料なら、有権者はクルマの運転を続けることができ、しかも温室効果ガス排出対策にもなるため、エタノールは世界中の政治家に人気がある。しかし、「バイオ燃料は万能薬ではない」、アースポリシー研究所のレスター・ブラウンは先週、米国上院で行われた説明でそう発言した。「世界は、20億人の貧しい人々がクルマを所有する8億人と穀物をめぐり、直接争わなければならない段階に入った」。

食物経済がエネルギー経済と連動するという徴候は、すでに現れている。エタノール・ブームのおかげで、砂糖価格は石油価格を追うようになり、同じことが穀物についても起ころうとしていると、ブラウンは説明する。
「アブラの価格が上昇すれば、食品価格も上がる。アブラが1バレル、 60ドルから80ドルに急上昇すれば、スーパーマーケットにおける支払いも上がることは間違いない」

食品価格の上昇は先進国の人間にとってはライフスタイルの変更ですむが、それ以外の場所では生死に関わる問題だ。食品価格の急騰は、穀物輸入に依存する途上国で、すでに暴動を生んでおり、これから、暴動はさらに広がるだろう。
世界中で飢餓に苦しむ人間の数は数十年に渡り低下してきたが、その数は再び、上昇し始めている。国連は、食糧援助の必要な国として34カ国を指定している。食料援助プログラムへの予算は限られており、穀物価格が倍になれば、食糧援助は半減することを意味する。

食物に対する権利に関する国連人権委員会の特別報告者、ジャン・ジーグラーは、米国とEUがアブラの輸入依存を減らすため、エタノール生産の促進を進めていることを「偽善そのものでしかない」と糾弾している。ジーグラーは、食物の代わりにエタノールを生産することで数十万人もの人々が餓死に追いやるだろうと発言している。
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Thursday, June 21, 2007

目線/Women in Struggle

またまま、切り張り転載情報になりますが、信頼できる筋からの情報によれば、「パレスチナでもほとんど語られることのない女性たちの姿を描いた映画」が日本全国各地で上映され、しかも監督のブサイナ・ホーリーも来日するということです。「今の時期にパレスチナから監督が来日できるのか(つまり、イスラエルが出国させてくれるのか)、それが心配だ」とのことですが、お近くの方、この機会をお見逃しなく。

下記、p-navi/infoより転載。
ーーーー(転載)ーーーーー
映画『Women in Struggle -目線-』と監督パレスチナから来日ツアー
パレスチナの女性たちの闘いを描いたドキュメンタリー『Women in Struggle -目線-』の上映と、ブサイナ・ホーリー監督トークツアー日本縦断が6月25日から始まる。

──札幌6月25日・26日、仙台27日、東京30日・7月1日、沖縄4日、広島6日、大阪7日、京都8日──

作品『Women in Struggle ー目線ー』について

「イスラエルの刑務所に拘留されていた元政治犯のパレスチナ女性たちが様々なStruggle (闘い)を呼び覚ます時。姉妹、母親、妻としての日常的な役割から離れてパレスチナの独立を目指して闘いに身を浸した4人の女性たちは、刑務所を出てからも、自らの内に「牢」を抱えながら、より大きな「牢」で日常を送っている。拘留時の耐え難い経験や現在のパレスチナでの日常生活の困難を自らの言葉で語る。」

(各会場で上映と監督トーク、さらに独自の取り組みなどが行われているので、それも楽しみ。詳細については ブサイナ・ホーリー監督来日トーク巡回上映 パレスチナからの目線 にて確認を)

[パレスチナでもほとんど語られることのない女性たちの姿が見られるので、この映画は楽しみにしてきたもののひとつ。しかし、今の時期にパレスチナから監督が来日できるのか(つまり、イスラエルが出国させてくれるのか)、それが心配だ]
ーー−(転載終わり)ーーー

あっ、ビーさん、絵はがき、ありがとう。また、沖縄に行きたくなっちゃった。

Wednesday, June 20, 2007

おちゃらけ有理!/yes the vivoleum men.

環境ゲテモノ化にしてもオイルピークにしても、そういう時代に対し正攻法でガチンコで渡り合うのもひとつ、もちろん重要なことではあります。

でも、こればっかりで突き詰めていくと、結構、袋小路に陥って、落ち込んでしまうんですよね。だから、時にはユーモアをふんだんに交えた奇襲戦法も考えなければなりません。たとえば、これらの問題をちゃかしてパロってしまうとか。おとなりのアマノさんなんかの得意な方法ですね。真剣な面してる連中の足許をひっくり返し、その真剣な面そのものをげらげらと笑い返してやるゲリラ的な戦法のことです。
さて、世界には「人類を直面する2つの大量破壊兵器」にゲリラ的な手法で取り組んでいる連中がいます。その名もイエス・メン。99年にwtoシアトル会議の非公式サイトを立ち上げ、パロって混乱させるところから始めたAndy BichlbaumとMike Bonannoの二人組、6月14日にはカナダのカルガリーで開かれたGO-EXPOって名前のカナダ最大のアブラ業界の会議に登場、なんと、エクソンとNPC(全米石油評議会)の人間に成り済まして、プレゼンをしちゃったってんですからすごい。
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それも、その日のメインイベントに祭り上げられてたってんですから、あらあら、主催者もユーモアが分かるのか、それともお粗末にいい加減なのか、わかりません。
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二人のプレゼンの内容は「新エネルギー源:ヴィヴォリウム」。ピークに直面してエクソンは新エネルギー源を開発中である。しかも原料は無尽蔵な人間である。「世界では毎年すでに温暖化のおかげで15万人が犠牲になっている。それを原料にエクソンは新しいエネルギー源を開発中である。その名もヴィヴォリウム」ってな調子で、パワポを見せながらブレゼンしたそうです。
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300人からの業界の人間が座るテーブルには、がんで死亡したエクソンの清掃人、レジーの亡骸から作られたというヴィヴォリウム製のローソクが配られ、ふむ。それなりの説得力があったようですねえ。

でも、ん!?。どこか変だぜって気づいた主催者が介入し、二人のイエスメンは警備員に排除されたそうです。

主催者側は懲罰に処するべきだって、頭から湯気立てて騒いでるそうですが、おいおい、ちったあ大人になれよ。警察は「不法侵入」くらいでしか取り扱えないと二人を微罪放免したそうです。

環境ゲテモノ化時代、オイルピーク時代、しゃかりきに真剣な面してグラフや数字や図を持ち出すのも大切だけど、個人的にはこういうゲリラ的なの、好きだなあ。おちゃらけ有理!自分でも刺激されて、何かやりたくなっちゃう。

(すべての写真はヴィヴォリウムより)

Tuesday, June 19, 2007

催し物のお知らせ

アンテナに引っかかった催し物の切り貼り転載告知です。
自分は「学会」の会員でもありませんが、面白そうではありますので、ご近所の方、お出かけください。

ーーーー(転載)ーーーーー
日時 2007年6月26日(火)14:00〜17:00
場所 東京大学 山上会館

主催 もったいない学会

講演内容
14:00-14:10 挨拶
14:10-14:40 石油ってなに 大久保秦邦  
14:40-15:10 ピークオイルをご存知ですか 三ヶ田 均
15:10-15:30 休憩
15:30-16:00 ピークオイル後生活はどうなる 佐藤裕久
16:00-16:20 脱石油社会をどのように生きる 生活編 小川 修
16:20-16:40 脱石油社会をどのように生きる 農村編 安藤 満
16:40-17:00 アンケート パネル
ポスターセッション 太陽、風力、地熱、小水力、バイオマスなどのについての発表

申込方法: guest@mottainaisociety.org に氏名、所属をご記入し、「6月26日のシンポジウム参加」と併せてご記入して、メール送信して下さい。
※入場無料

もったいない学会では、一般の方々を対象としたシンポジウムを開催いたします。
「石油ピーク」について分かりやすく解説し、「もったいない精神」に基づくあるべき対応について考えます。

この機会に、石油ピークについての理解を深めると共に、エネルギー問題あるいは生活哲学について考えて見ましょう。

今回は専門的な知識の必要はなく、身近な話題を中心に脱浪費「もったいない精神」の生活スタイルについてお話させていただく予定です。
「興味はあるけど、難しそうだし、気後れする。」と言う方には是非ご参加いただきたくご案内申し上げます。
幅広いお話を楽しくお聴きいただけると思います。
ーーーー(転載おわり)ーーーーー

オーストラリアは大丈夫か/Will she be right?

オーストラリアでは「何とかなるさ,大丈夫」って意味でShe’ll be right.なんて言います。あくせくすることはない、なるようにしかならない、オ−ストラリア人はこのフレーズを口にして、日がな一日、ビーチに寝転がることもあります。また、いったん逆境におかれれば、このフレーズを口にしながら、それに立ち向かっていくこともあります。

80年代の初め、「労働者天国」のオーストラリア経済の行く末を心配したハーマン・カーンとトーマス・ペッパーは、それをもじり本のタイトルにしたこともあります(邦訳は「オーストラリアは大丈夫か」というタイトルでサイマル出版から。翻訳は麻生雍一郎、堀 武昭という初期の日豪プレスではおなじみの顔ぶれ)。その心配を真に受けたのか、80年代のホーク/キーティング労働党政権のもとで金融の自由化、労働市場の自由化が進み、さらにそれを徹底的に踏襲したハワード政権の新自由主義的な経済政策のおかげで、オーストラリア経済は低インフレ、低失業率、低利を達成、二十一世紀にはいってからも世界がうらやむ好況です。

それもあってか、昨年11月に国連から発表された人間開発指標によればオーストラリアはノルウェー、アイスランドに次いで第3位にランクされています。世界の177カ国・地域について、個人所得だとか、文盲率、福祉や医療、寿命など人間社会を総合的に評価し「豊かさ」を計った結果なのだそうですが、オーストラリアは世界で3番目に住みやすい,豊かな場所ということです。が、どうでしょう、実感はあるでしょうか。「豊かさ」のファンダメンタルをよく見てみると、「オーストラリアは大丈夫か」と問いかけたくなるようなことばかりです。

今年の5月は観測史上、一番暖かい5月だったそうです。「地球温暖化」なんて言うと、どこか,ほんわか,ぬくぬくと温かくなっていくようで,あんまり危機感を喚起しないので、「気候ゲテモノ化」なんて言う人もいますが、とにかく未曾有の領域に突っ込んでいます。オーストラリアでは洪水や突風など「異常気象」の多発、サイクロンの大型化、ブッシュファイヤーの頻繁化、そして、水不足の恒常化が予想されています。もちろん、未曾有の領域なので、何が起こるかわからない。「季節外れ」だの「記録破り」なことばかりなので、これまでの気象記録や記憶、常識が使い物にならない、そんな時代を私たちは生きているのです。このことをまず、肝に銘じておかなければなりません。

「気候ゲテモノ化」への対策としては、それぞれの国に温暖化ガス削減を義務づけた京都議定書があります。オーストラリアは、森林による吸収を含めるという計算方法を強引にみとめさせたおかげで、先進国の中では数少ない、1990年に比べ10%の増加を認めらた国です。にもかかわらず、オーストラリアはいまだに調印を拒否しています。先進国では、オーストラリアとアメリカだけです。ハワード政権が「京都」を拒否するのはなぜなのでしょう。政治的な理由でしょうか。同じように「京都」を拒否するアメリカに連帯しているのでしょうか。わかりません。

この国の指導者は温暖化が遡上に上るたびに、中国などの途上国の温暖化ガス排出を槍玉に挙げます。確かに中国の二酸化炭素排出総量は13.8%(世界2位)ですが,個人あたりにすれば0.7トン程度。これに比べ,オーストラリアは総量では1.3%(15位)と微々たるものですが,一人当たりになると5トン(4位)です。「発展途上国」に難癖をつけるより,先進国の人間は「便利で豊かな暮らし」をあらため、これまでの「発展」のつけを払うのが先ではないでしょうか。

もっとも、ハワード政権は昨年9月あたりから、気候変動に対して、これまでのような「無視」を決め込むことは止めたようです。気候ゲテモノ化のコストを試算するスターン報告書がイギリスで発表されたり、世界最大のメディア網を牛耳るオーストラリア系アメリカ人、ルパート・マードックの豹変などを受けてのことでしょうか、何か、やっているというところを見せるようになってはきています。やはり9月あたりからですが、これまで温暖化を心配する人たちを笑い者にし,嘲笑してきたマードック系のメディアがみずからカーボンニュートラルを目指す、180度の転換をしています。

もっとも、スターン報告書については「オーストラリアの二酸化炭素排出は世界の1%程度。何をやろうが中国やインドが何もしなければ,すぐに帳消しになる量だ」とハワード首相。渋々とした調子は相変わらずです。それなら,中国やインドからの輸入を控えれば良さそうなものですが,そんなことをすれば,経済への影響が大きいだけに,もちろんおくびにも出しません。

昨年11月には2012年(マヤ暦によると世界が終末を迎える年)に失効する「京都以降」について、ナイロビで気候変動枠組条約第2回締約国会議が開かれました。当時のイアン・キャンベル「環境」大臣はまたぞろ、中国だの途上国だの、そんなことを口にして総スカンを食らいました。世界的な問題にオーストラリア政府はほおかむりを決め込み、世界の足を引っ張っている。これが一番心配です。

気候ゲテモノ化時代の様相を予測するのは困難なことですが、オーストラリアを直撃するのは水不足でしょう。ゲテモノ化時代、雨が何ヶ月も降らない、降れば土砂降りの洪水というような事態が懸念されています。つまり、年間降水量はこれまで通りかもしれなくても、雨の降る日が限られてしまい、植物や人間に使える量が限られてしまう。そんな状況で多発するであろうブッシュファイヤーにも、これまでのように消火用の水が手に入るのか、心配されています。

オーストラリアにおける個人あたりの水使用量は、世界各国と比べるとずば抜けています。乾いた大陸に暮らしているという自覚はあまりないようですが、これからはそんな暮らしはできない。大陸の大半では水不足が恒常的に続く、そう覚悟しておいた方が良さそうです。

ここ数年、大陸は、第2次大戦末期の干ばつ,そして,1901年の連邦結成当時の干ばつが比較に出されるほど、乾いています。まあ、60年に一度,もしくは百年以上に1度の規模なんてのは頼りになる記憶や記録があり,なるほどって思いますが,ラジオでは「千年に一度」って言ってます。うーん,先住民族の記憶に基づくものなのでしょうか。それとも「史上最悪」を言い換えただけなのでしょうか。

水は言うまでもなく、私たちの生活の基礎であり、これがなければ暮らしていくことはできません。淡水化プラントやダムを建てるとか、水の使用制限、リサイクル、不作,肉や穀物,野菜、果実の値上がりなど、このごろ目にするニュースは水不足から生じる話題ばかりです。電力の値段も大きく上昇することが最近報道されていましたが、これも水不足が影響しています。オーストラリアの電力は石炭火力に8割近くを依存していますが、これには大量の水が必要だからです。ハワード首相が環境対策としてぞっこんの原発にしても冷却用を含め、膨大な水を必要とします。原発先進国のフランスなどではここ何年か、夏の水不足のおかげでいくつかの原発の運転を停止しなければならない事態になっています。発電には水が不可欠なのです。経済成長も便利な暮らしも水不足に足を引っ張られそうです。

そして、金額ベースでオーストラリアの輸出の1/4を稼ぎ出している農業も水が基本です。食肉、小麦、大麦の輸出はそれぞれ世界第二位で、オーストラリアは世界でも有数の食料輸出国ですが、その基盤は水です。それがぐらぐらしています。昨冬から穀物の収穫は壊滅的で、家畜の飼料はもちろん、人間の食料も輸出しなければならない、そこまで追い込まれています。

オーストラリアの農業生産が集中するのはマレー川、ダーリング川流域ですが、長年にわたる無茶な取水のおかげで、川の生態系は破壊され、ひん死の状態です。日本へもオジービーフなんて牛肉、そして米や生鮮野菜を安く輸出していますが、乾いた大陸から水を搾り取り、輸出しているようなものです。そんな環境収奪形の農業は成り立つのか、たくさんの水を必要とする米や綿栽培がオーストラリアで可能なのかという議論が始まる一方,農業そのものをもっと降水量の多い大陸北部に移してしまえ、いや,大陸北部から運河やパイプで水を引っ張ってこよう,などという乱暴な議論も出ています。

干ばつでひからびているのは農地だけではありません。人間の考え方もいびつに尊大にひからびてしまったようです。

シドニーの水瓶,ワラガンバ・ダムは南部のショールヘイブン地方からパイプラインで水を引っ張ってきて,ようやく4割を保っている状態で,そうでもなければ2割を切るところまで貯水量が減っており、うちの近所,リスゴーからも取水しようという話が進んでいます。メルボルンなどビクトリア州全域も水不足。アデレードやパースも青息吐息,降水量が多いイメージのタスマニアも干ばつ状態です。なのに、都市を北へ移そうという意見はなかなか聞こえません。

水不足なら海水を淡水化すればいいじゃないか、テクノロジーが解決するだろうと考えがちですが、淡水化には膨大なエネルギーが必要になります。「気候ゲテモノ化」には「オイル・ピーク」という醜い双子がいます。そもそも、地球環境をゲテモノ化しているのは人類が燃やす化石燃料が原因とされています。150年前に発見されて以来、私たちの「近代文明」や「経済成長」、「近代型農業」や「近代的で便利な暮らし」を支えてきたのは安くてふんだんに使えるアブラです。しかし、アブラを含めた化石燃料は有限な資源であり、有限な資源というものは採掘していけばやがてなくなるものです。どれだけのカネをつぎ込もうが、「技術革新」が進もうと、ないものはない。アブラの生産ピークが近づいています。すでにピークに達したという研究者もいれば、数年内のことだという識者もいます。どちらにしても、いったん頂上を極めてしまうと、急激な減耗が始まります。

ピークというのは、全体の半分を使い切った時点のことで、まだこれまで使った量と同じだけのアブラは残っています。しかし、残りのアブラはこれまでのように簡単に手にすることはできません。人間というのは、楽に手に入るところから、手をつけるもので、深海や極地など、カネのかかる難しいところは後回しにするからです。そして、これから手に入るアブラはタールサンドやオリノコ原油など、精製も大変なものになります。安いアブラをじゃかすかと「湯水のように」使って平気な時代は終わったことは間違いありません。

右肩あがりの成長思考の中で育ってきた私たちには、数パーセントの減耗であれ、受け入れがたいことかもしれませんが、それがピーク以降の右膝下がり時代の現実なのです。

ゲテモノ化時代への対応、水不足への対応もオイルピークとの関連で探っていかなければなりません。私たちは気候ゲテモノ化とオイルピークという歴史的な瞬間を生きています。

そういう視点から眺めると、オーストラリアの豊かさって,けっこう、砂上の楼閣のようなところがあると思います。もっとも、それはオーストラリアに限ったことではなく、地球全体の問題、近代文明全体の問題ですが。

さて、それではどうしたらいいのか。問題がでかいだけに、自分一人では何もできないのではないか、無力感にとらわれがちです。しかし、人間社会は一人一人から作り上げられています。自分も地球の一員です。

できることはたくさんあります。地球環境のゲテモノ化を少しでもくいとめるには、みずから、エネルギー消費を減らすことです。例えば、クルマを2台使っているうちなら、1台で何とかならないだろうか。裏庭で野菜を作れば、たかが自分の腹を膨らませるために、生産から流通まで化石燃料がばんばん投入された食料に頼らなくてもすみます。

政府や自治体に働きかけることも大切ですが、一人一人が地球を慈しみ、分相応な暮らしを心がけることで大きな違いが出てくることでしょう。できることから、ゆっくりと取り組んでいく。それがオーストラリアの環境、地球環境をゲテモノ化から阻止する確実な方法です。
(日豪プレス7月号)
http://www.nichigo.com.au/topics/pick/2007/0707n_eco/index.htm

Monday, June 18, 2007

ガザに盲いて/eyeless in Gaza.

ガザの状況に関し、一般メディアの報道から欠落している視点を紹介する文章をいくつか紹介しときます。パレスチナの惨状を理解する手助けにしてください。
●早尾貴紀の「ハマスとファタハの抗争と連立内閣崩壊を言う前に——意図的な連立潰し
●p-navi infoの『なぜ「クーデタ」?
●天木直人の「ガザでホロコーストを見ることになる

これらに重要な点はほとんど網羅されていますがひとつだけ付け加えます。

アリ・アブニマーが6月14日付けのエレクトロニック・インティファーダの記事、「ブッシュの政策へのしっぺ返し」で伝えていますが、パレスチナには80年代にアメリカが中米で展開した「汚い戦争」と同じ構図が見えます。

それもそのはず、現在、ホワイトハウスで中東政策を担当する国家安全保障担当副補佐官エリオット・エイブラムズ(Elliott Abrams)はレーガン大統領の元、1980年代にニカラグアのコントラへの資金流用にかかわり、イランコントラ事件で議会への偽証罪で有罪判決を受けた人物です。エルサルバドル、エルモゾテにおける一般民間人の虐殺や残虐行為の隠蔽にも手を貸したことで知られる人物です。

エイブラムズが中東政策のチーフとして進めてきたのは「パレスチナにおけるコントラ」作りであり、その受け皿となっているのが、ガザの軍閥でパレスチナ自治政府国家安全保障顧問、ムハマド・ダーラン(Mohammad Dahlan)だと言われています。

この二人の名前は記憶しておいた方が良さそうです。

Wednesday, June 13, 2007

ハワードの誘惑/Howard i know.

地球がどんどん狭くなる時代のことであり、ある政策や選挙キャンペーンが他の国で採用されても不思議なことではありません。政策が人のためにも地球のためにもなるものならば、どしどしと真似られてほしいものです。

しかし、一国のリーダーが別の国の指導者になにがしかの「圧力」をかけ、政策変更を迫る、となると話は別です。

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最近出版された「ハワードの誘惑(Howard’s Seduction) 」の表紙

週末のカナダのグローブ・アンド・メール紙はオタワ発で、2006年1月の総選挙で誕生した保守党ハーパー政権の政策変更にオーストラリアのハワード首相が直接手を下した疑惑を報道しています。

グローブ・アンド・メール紙が問題としているのは先住民の自決,そして伝来土地の管理権利を認める国連先住民権利宣言です。20年以上にわたる交渉のあいだ、歴代カナダ政府は宣言の採択を目指し、各国を説いて回る立場でした。それが突然180度態度を変更したのはハーパー政権誕生から数ヶ月後、2006年5月のことです。

グローブ・アンド・メール紙は「政府筋が先週金曜明かしたところによれば」として、次のようにこの経過を伝えています。

スティーブン・ハーパー首相はハワード首相との会談の直後、ジム・プレンティス先住民族担当相を呼び、宣言支持の立場を改めるように指示した。


アメリカとオーストラリアは鉱業利権とのからみで最初からこの宣言に反対の立場であり、国連の場では孤立していました。カナダの翻意は願ってもない援護射撃になったことは間違いありません。

8月の国連人権委員会でカナダは反対票を投じます。カナダ(とロシア)の反対にも関わらず、宣言草案は人権委員会では可決され、総会へ送られましたが、結局、11月の国連総会の第三委員会の投票では、「棚上げ」にされてしまいました。

まだ政権につく以前のハーパーがハワード首相と直接顔を合わせたのは、2005年の国際民主同盟(International Democratic Union)の会議だったと言われています。国際民主同盟というのはサッチャーやブッシュ(父)などの肝いりで1983年に発足した保守党、保守政治家の集まりで、現在、ハワード首相が議長を務めています。世界の保守政治家はこの会合を通じ、意見交換をし、人的つながりを築いています。

ハワード首相は世界の保守政治家の間でスター的存在で、選挙戦術はもちろん、強硬な移民政策、追米外交政策、「京都議定書」骨抜き化など、各国の保守党からお手本にされています。金沢大学の宋安鍾は『現代思想6月号』の記事で、日本で現在進行中の「コリア系日本人」化プロジェクトの中にはハワード政権の国粋的政策の影が見えると書いています。

各国の保守政党とハワード首相の関係は、ただ単に手法をまねするとか、政策を採用することにとどまりません。その間には直接、人的なつながりがあります。

2005年、英国の総選挙で破れはしたものの、保守党の選挙参謀を務めたのはハワード首相の側近で選挙のベテラン、リントン・クロスビー(Lynton Crosby)でした。クロスビーは前述のIDUでも精力的な活動をしているほか、米共和党、台湾の国民党などにもアドバイスをしています。

カナダでは翌年1月の総選挙で、ハーパー陣営がやはり、ハワードもどきの選挙戦を展開しますが、このとき、保守党の選挙戦の相談役として駆り出されたのは、ハワード首相の選挙参謀、連邦自由党の幹事、ブライアン・ラフナン(Brian Loughnane)でした。

もちろん、ハーパー首相サイドはグローブ・アンド・メールの記事に対し「事実無根」と応えています。実際に何が語られたのかわからない密室の中でのことだけに、ハワード首相の側も否定することは間違いありません。

ハワード首相に率いられた保守陣営は4度の選挙を勝ち抜き、10年以上も政権の座にあります。最近でこそ、国内世論調査で野党党首のケブン・ラッドの後塵を排していますが、今年後半に予想される選挙本番ではどうでしょうか。

まあ、世界中に「ハワード的」な政治家や政策が蔓延し、世界がハワード化してしまえば、ハワード本人が政権にあろうがなかろうが、どうでもいいのかもしれません。

Friday, June 08, 2007

激しい雨が/a hard rain (is falling).

サイクロン「ゴヌ」が湾岸襲来!なんて心配をしていたら、はげしい雨と風をともなう嵐がシドニー近郊を襲っています。すでに9人が行方不明になっています。
シドニー北部の石炭積出港、ニューカッスルでは巨大な石炭輸送船が座礁しています。
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写真はthe ageより。

30年来とかの形容で呼ばれるものすごい嵐ではありますが、カテゴリーなんとかにもはいらないようなもので、カテゴリ−5,ゴヌの来襲を受けたペルシャ湾にいる巨大なタンカーは大丈夫なのか、パイプラインは大丈夫なのか、心配せざるを得ません。

と同時にオマーンやイランに暮らす人のことを思わずにはいられません。
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写真はweather undergroundより。

地球の反対側にいる人間は自分勝手にアブラの供給事情のことばかりを心配しがちで、もちろん、それも重要には違いないものの、CNNによれば、オマーンだけで25人が死亡、行方不明者も多数出ているようです。大変な災害です。ゴヌは熱帯暴風雨に勢力を弱めており、復旧作業が始まっているようですが、これ以上、人命が失われないことを祈ります。

ハワード首相やアベ首相、ブッシュ大統領がどう詭弁を尽くそうが、地球環境のゲテモノ化は現実です。

Thursday, June 07, 2007

帰属と離反/ohm sweet ohm.

新しい国への移住,旅券の切り替えなど個人的な事情もあり、国籍について、近代国家における国民とは何か、などについて考える機会が増えてます。

ここ30年近く、「多民族国家」と呼ばれるオーストラリアで根無し草、風来坊の移民を続けてきましたが、いま、ある国の「国民」になることを真剣に考えてます。
その件についてはまた、いずれ。

切り張り転載情報になりますが、早尾貴紀の講演が東京であるそうです。

19世紀の遺物である国民国家が上と下から、ものすごい勢いで解体されるいまどき、「単一民族国家」なんて幻想にがむしゃらにしがみつくのは日本とイスラエルくらいなものですが、日本/イスラエルを俯瞰する早尾貴紀の「多文化主義」から考えるシオニズムと天皇制」を読むと、話を聞きにいきたくなります。

ご近所の方はお誘い合わせてお出かけください。

*****早尾貴紀さんとともに「イスラエル・パレスチナ問題」を考える****

 「イスラエル・パレスチナ」というと遠い国の話であるかのように思いがちですが、イスラエルの政策の底に流れているレイシズム(民族的優越感)の思想は決して私たちと無縁ではありません。
 パレスチナの人々が置かれている状況とそれを生み出し続ける思想を検証しながら、「占領」、民族の和解、多文化共生の可能性、さらに帰還権・血統主義の問題など、イスラエルと日本に交錯する問題を早尾貴紀さん(東京経済大学非常勤講師)と一緒に考えませんか。お忙しいでしょうが、皆様、どうぞご参加くださいませ。


・日時  2007年6月11日(月)午後6時半〜8時半
・場所  ピールズ・プラン研究所会議室
      千代田区神田神保町3ー1ー6
       日建神保町ビル9FーB(1階は珈琲館)
      都営新宿線神保町駅 A1出口徒歩1分
      Tel:03 6856 2005
・講師  早尾貴紀さん
     (東京経済大学非常勤講師、パレスチナオリーブ・スタッフ)
・参加費 500円
・主催 市民の意見30の会 03-3423-0185

#予約は必要ありません。
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Tuesday, June 05, 2007

嵐とともに去りぬ/Gonu with the wind.

ペルシャ湾岸にカテゴリ−5のサイクロン「ゴヌ」が接近しています。
インド洋からホルムズ海峡にサイクロンが直撃というニュースはあまり聞いたことがありませんが、気候ゲテモノ化の時代ですから、あり得ることです。
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accuweather.comより

これを受け、ヨーロッパではすでに原油価格が3%上昇しています。

採油施設やパイプライン、油井にアブラ輸送船のルートが集中する場所だけに、それももっともなことですが、それにしても、何かダメージがあったりしたわけでもないのに、これほど敏感な反応というのは我々の生きている時代を象徴しています。アブラの需要と供給がそれほど逼迫しているということです。些細なことでもアブラの供給事情に一喜一憂しなければならない、それがオイル・ピーク以降の時代なのです。

日本語メディアでは日経がニューヨーク発の短信を載せているだけですが、自分たちの生きているアブラ文明の時代は脆弱であることを今一度肝に銘じなければなりません。

とりあえず、ここ数日はペルシャ湾岸を徘徊するゴヌの動きから目が離せません。

Monday, June 04, 2007

核のゴミ捨て場/Fair Dinkum!?

先週末の新聞によれば、北部準州のアボリジニが自らの土地を核のゴミ捨て場として差し出すことを決めたそうです。原発や核燃料サイクルの推進に躍起になるハワード政権、そして日本を含め、原発の恩恵にあずかる現代社会にとっては朗報です。

大陸のまっただ中、アリス・スプリングスとダーウィンの中間にあるテナント・クリークから120キロ離れたマッカティ地区(2241平方キロ)を所有するンガパ族のアボリジニは2年越しの秘密交渉の末、1.5平方キロを核のゴミ捨てに使われることに合意したということです。

連邦政府は低・中レベル核廃棄物、5000立法メートルの貯蔵に1200万豪ドルを払うそうです。この土地の所有を苦難の末に認められた70人からなるンガパ族は、このカネが「子供たちの教育」に必要なのだ、止むに止まれぬ選択であることを強調します。

自然と一体となって暮らしてきたアボリジニのなかには核廃棄物による汚染が「将来に禍根を残す」と心配する声ももちろんあります。準州政府は放射性廃棄物の投棄施設は認めないという法律を可決していますが、連邦政府は意にも介さず押し切る腹づもりです。

まだここがそういう目的に使える土地なのか、環境調査などはまだまだこれからのことだというのに、ビショップ科学大臣は「ここ、4、5年のうちにオープンするだろう」とすでに調査の結果が決まっているような口ぶりです。

アボリジニの苦渋の決断のなかに、何度も訪れた六ヶ所や福井でみたのと同じ構図が浮かんできます。

折しも、先週末はアボリジニを国民として認めるかどうか、国民投票が行われてから40周年でもありました。アボリジニはわずか40年前まで人間として認められていなかったということです。

67年の国民投票では9割が賛成票を投じ、アボリジニは国民として認められるのですが,それまでは「死にゆく民族」として文字通り人間以下の扱いをされていました。白人入植以来の組織的な虐殺こそ止んだものの、子供たちを親や家族から引き離し、里子に出し、施設に収容する政策は長い間続きました。この世代は「盗まれた世代」と呼ばれ、被害にあった子供たちの数は数千人にも上ります。やはり、先週末は「盗まれた世代」に関する政府報告書が作成されてから10周年でした。

これだけの時間が流れ、いくつもの報告書が作成されながら、アボリジニの生活や健康、教育水準はいまだに国民一般よりかなり低く、それは首相や担当大臣も認めるところです。監獄入りする率も一般国民に比べ13倍も高いことが報告されています。

いったん低レベル、中レベルの核廃棄物を受け入れてしまえば、「毒を喰らわば皿まで」で、やがて高レベル廃棄物まで受け入れるようになることは目に見えています。それが我々の暮らす現代社会のやり方です。

困窮に喘ぐアボリジニの足許を見すかし、札束を投げつけ、エネルギー問題の解決を計ろうとする現代社会は病んでいます。

三国同盟発足/Janus glares.

2日、日米豪三国の軍事大臣がシンガポールで初会合し、事実上、三国軍事同盟が発足した。
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(写真はAP=共同)

米国主導の三国軍事同盟は、ハワード首相が今年3月に来日した時「安全保障協力に関する日豪共同宣言」に署名し、できあがっていたが、担当の軍事大臣がそろい踏みするのは初めてだ。日本は戦後、米国以外とは軍事同盟は結んでなかったが、「防衛省」への格上げを機に、集団軍事化への動きは一気に加速しそうだ。

すでにサマワなどで日豪軍は一緒に戦っているが、これからも演習などを通し、現場におけるインターオペラビリティ(相互運用性)を高める作業が進むだろう。武器や兵器の米軍規格への統一もどんどん進行する。「文民」レベルではこれまで、米日(2プラス2),米豪(AUSMIN)の間で個別に行われてきた定期軍事/外交閣僚協議が三国間で行われるようになるだろう。

日米間の(2プラス2)と同じ形式の定期協議は1985年以来,それまでのアンザス外務大臣会議からニュー・ジーランドを外した形で米豪間で行われており、2プラス2プラス2、もしくはJAUSMIN、まるでジャスミンのような三国間の集団的枠組みへ「発展」するのは簡単だ。もっとも、三国同盟と言っても上記の写真にも見られるように、あくまでも米国主導であることを忘れてはならない。

こうした日米安保の危険な変質については、すでに70年代から山川暁夫などがJANZUSジャンザスの可能性を指摘していたが、ニュー・ジーランドが核搭載船の入港をめぐり80年代に脱落、三国軍事同盟に落ち着いた。

いつだったか、自分でも迫り来る三国同盟について「万華鏡」に書いたような気がする。JANZUSからNZが抜けるとJAUSなんだけど、その記事では,確か,この同盟をJANUSと呼んだような気がする。

JANUSというのはローマ神話で出入り口とドアの神様であり、英語のジャニュアリー(1月)はここに由来する。いわば門番であり、2つの顔で前と後ろに目を光らせている。

さて、日米豪三国軍事同盟はどんな門の番をし、誰から門を守るために組まれたのだろうか。

銃を持たない市民は目を光らせないといけない。

Friday, June 01, 2007

救地球コンサート/live earth

先日、ロック写真家のAkihiro Takayamaさんがコメントに書き込んでくれましたが、007年の07月07日、気候ゲテモノ化を訴えるコンサート、ライブ・アースが開かれます。

アル・ゴアの提唱でSOS - SAVE OUR SELVES(自分自身を救え)ってノリで、シドニーを皮切りに7つの国でコンサートが開かれます。日本では東京と京都の2箇所。どこもかしこもそれぞれ、そうそうたる顔ぶれで、おもしろそう。

ベテラン環境運動家のSGWさんは「正直言って、音楽の力ってどれほどのものか分かりませんが、若者の関心を引くという点についてだけは確かなものでしょう」とおっしゃってますが、まさしく同感。音楽の力で世界が変わるなんて幻想は持ってませんが、ハワード首相やアベ首相、ブッシュ大統領など、ゲテモノ化はまだまだ先のことだと思い、対策を先延ばしにしている人たちに対する、それなりの示威行為にはなるでしょう。

個人的な趣味ではやはりマイケル・ナイマンとymoで京都かな。