Tuesday, September 05, 2006

奇々怪々/selling oil to Saudi?

世の中には不思議なこともあるもので,世界一の産油国であるサウジ・アラビアがアブラの買い付けをしていることを9月2日付けのロイター電がシンガポール発で伝えています。

(サウジが世界一,といっても、モスニュースによれば、8月の生産ではロシアがこれまでで最高の975万バレルを達成し,サウジを上回ったそうですが。)

国営石油企業のサウジアラムコ社が買いつけたのはアブラのなかでは一番値段が安い、いわゆる重油です。しかも、粘度が380センチストローク (cst) という、ものすごくどろどろと粘度が高い高粘度C重油というやつだそうです。普通のディーゼルに使われるA重油が20cSt以下なので、どのくらいドロリとしているのか想像がつきそうです。サウジはこれをトンあたり$15で16万トン購入したと報告されています(これをバレル換算するとどのくらいになるのか,ちょっと計算できてませんが,安そうな感じであることはわかります)。

シンガポールの業界筋は、このクラスのアブラはだぶついており,買った方が安くつくからだと説明しています。確かに,製油施設をもっと値段の高いアブラや石油化学原料を精製するのに使った方が経済効率がよくなるのではないか,という理屈はわかりますが,それでも何とも釈然としないものがあります。

ちなみに、普通,高粘度C重油は大型ディーゼル・エンジンやタービンなどが用途だと言われていますが,本当にそうなのか,という疑問がわいてきます。先日も報告しましたが、サウジアラビアの最大油田(ということは世界最大)であるガワール(公称日産550万バレル)の減耗がはげしく,現在は300万バレルがやっとだという情報があります。しかし、それではどうやって,サウジは日産900万バレル近い生産を維持しているのか,ほかの油田だけでは到底200〜250万バレルの穴を埋める能力はありません。その記事の中で,「貯蔵タンクの備蓄を切り崩しているという可能性」を検討しましたが、「そうだとすると,それが底をついたときサウジの生産量は急激に落ちる」ことになります。

この情報を最初にもたらしたリチャード・ハインバーグに、先日、シドニーでの公演の際に直接質問すると,精度の高い情報であることを強調し,彼も備蓄の切り崩しが進んでいるのではないかという見方でした。

そういう観点からこのロイター電を読み直すと、いろいろなことが想像できますが、それはあくまでも憶測にすぎません。確実なことは、サウジアラビアが「経済的な理由」にせよ何にせよ,アブラを購入するのはこれが初めてのことだ。それだけです。
(5/9/6)

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