Friday, September 01, 2006

憂鬱な春/early spring warns.

ふらりふらふら、陽気に誘われ,庭をほっつき歩いていたらまだ8月が終わっていないというのに蛇にでっ食わした。うちには守護神のように蛇が何匹か住んでいて、春先に冬眠から醒め、うつらうつらとひなたぼっこをするのにでっ食わすのは毎年のことだから、それ自体,あんまり驚くことじゃない。驚いたのは春の訪れの早さだ。6月がめちゃ寒かったから,春は早いだろうなあと思ってはいたが,日本など北半球の感覚でいえば2月が終わる前に,突然春がやってきた。だって、たいていは9月にはいって、そろりそろりと温みだし,春の兆候である蛇に出会うのは9月の終わりころかな,って感覚。蛇との遭遇で春の訪れを意識してみると、あらあら、標高千メートルの高原は、春の兆候だらけです。
冬の間枯れていたチャイブが芽を伸ばしています。あれあれ、もう、こんなに。早速ちぎって味わいます。うーん、春の味。目を上げると桃や杏の木のつぼみが膨らみだしている。通りに出てみれば,梅の花が咲きだしている。うわあ,気づかないうちにこんなに春だ。

ここ数年は一年に一回,春先に頭を丸刈りにし、あとは伸びるのにまかせるというきわめていい加減な髪型を採用しています。冬には耳も隠れて防寒用になりますが、今は一年でも一番髪が長い時期。この調子だと,今年は髪を切る時期も早まりそうです。

寒い冬を過ごしたあとだけに,春の訪れに、もちろん、心は浮き浮きします。家の中で薪ストーブを抱きかかえるような生活から,庭にいる時間がどんどん長くなる。それはそれで気持ちがいいんだけど、これって,ちょっと早すぎるんじゃないかしら。何か,悪い予兆じゃないかしら。そういうクエスチョンマークが心の中に広がりつつ世界を見回すと,あらやっぱり。

最新のシュピーゲル誌は温暖化の影響でグリーンランドで牧畜やジャガイモの生産が上がっていることを報じています。このページの写真をみると,氷河の溶けたグリーンランドはほとんどタスマニア辺りと変わらないような光景でびっくりしてしまいます。

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そして、ガーディアン紙は26日付けで、春の早い訪れは「地球温暖化により季節のタイミングが狂わされているのを示す最初の決定的な証明」であると報道しています。

これはヨーロッパ17カ国から科学者が参加し,1971〜2000年に集められた542の植物種と19種の動物について、植物の開花や秋の落葉のタイミング、昆虫の季節的なふるまいの変化など、12万5,000の記録と観察を分析した研究に基づくもの。

それによれば「ヨーロッパ全域で1970年代初期に比べると,春の訪れは6〜8日早まっている」とのこと。秋の訪れも「過去30年の間に、平均で3日、遅くなっている」そうです。地球は間違いなく温暖化しています。

「この研究では季節の訪れるタイミングが変わってしまったことが明らかになったばかりではなく,温暖化の影響が著しい地域において,その傾向がより顕著であり」、早春の気温が10年間に1度上がったスペイン(ちなみにイギリスは30年で1度の上昇)では、春の訪れが2週間も早まっているのだそうです。

この影響で,植物の葉が出たり、花が咲いたり、実がなったり、そういう活動の8割について、時期が早まっていると研究は報告しています。これが生態系にもたらす影響は計り知れません。というのも、「温暖化に対し,生物がどれもが同じように適応しているわけではない」からで、たとえば、ある特定の植物をえさにする昆虫をえさにする鳥がいて、そのうちのひとつが温暖化に,ほかと違う適応をすれば、すべてのシステムが崩れてしまうことになります。

例えば,長距離を旅する渡り鳥。まだ、早い春の訪れに適応していないようで、食事の場所へ着いたときにはすでにえさがなくなっているかもしれません。渡り鳥が食卓にたどり着いたときには「すでに前菜が片付けられ,メインコースも半ばを過ぎている」ようなものだとのこと。

ヨーロッパで春が早まっているからといって,温暖化の影響がオーストラリアでも同じように現れるとは限りませんが,植物や昆虫,鳥などはすでに温暖化に対応し始めていることだけは明らかです。そういう「下等生物」よりお利口なはずの人間ときたら、オーストラリアのハワード首相のように、いまだに「決定的な証拠は出ていない、経済が大事だ」と月曜放送の番組で語り、気候変動を現実のものとして受け止めようとしません。感受性が欠けているのでしょうか、人間は春がすっかり沈黙するまで気がつかないのかもしれません。

早い春の訪れに心は踊るものの,はげしく痛みます。

(1/9/6)

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