Monday, September 11, 2006

平和をおねがい/Da pacem Domine

何年前かのこの日,たぶん,かの地のクラシック音楽専門局では、この人の曲を何曲かかけていたに違いない。だって,この人の誕生日だもの。

ラジオ局で選曲の仕事をしていたら,これほど使いやすい理由はないものね。自分が好きだからってだけだと他人をなかなか納得させにくいけど、「今日は35年生まれの作曲家の誕生日です。続けて3曲お聞きください」なんてね。安直だけど,説得力がある。
そんなわけで朝からずっと、うちでは窓の外の鉛色の空を見上げながら,もちろん、もうひとつの911も想起しながら、アーウ゛ォ・ペルトの作品をエンドレスで聞いている。

静寂で始まり,鐘が鳴り響き、降下しながらまた静寂で終わる「ベンジャミン・ ブリテンへの追悼歌」が流れてくる。そういえば、マイケル・ムーアが映画「華氏911」の中で使ってたっけ。ジェイソン・クリオットは「鏡の中の鏡」をバックに、事件直後,悲嘆にくれる人の表情だけをスローにコラージュして「サイト」というショート(未見)にまとめた,なんてどこかで読んだことがある。

でも、今年のペルト誕生日のお気に入りはアカペラ曲「ダ・パーチェム・ドミネ」だ。スペインのエスペリオンXXIのジョルディ・サヴァールの委嘱で2004年に開かれた「平和祈願」のコンサートのために作られた曲だ。中世の音楽に魅せられてきたペルトの本領発揮で、美しいアカペラが平和への祈りを奏でる曲だ。もちろん,ペルトの頭には自分の66歳の誕生日以降の出来事が頭にあったに違いない。

 Da pacem Domine
 in diebus nostris;
 quia non est alius
 qui pugnet pro nobis,
 nisi tu Deus noster.

平和をちょうだい 主よ いますぐに
だって あんたのほかに
われらのために戦ってくれるものはいない
神様 あんたしかいない
(もちろん、ラテン語はわかんないので,エーゴからの訳)

このラテン語のテキストは長い間伝わるものだそうで,これまでにもたくさんの作曲家が曲をつけてきたが、神様はいつになったらわれらの願いをかなえてくれるのだろうか。「もうひとつの911」で倒されたアジェンデ大統領が最期の言葉で呼びかけたように「私は諦めない」。

「自分の音楽はプリズムを通り抜ける光のようなものだ。聞く人によって少しずつ意味が違い,音楽体験のスペクトラムが生まれる。ちょうど,光が虹を作り出すように」(ペルト)。

鉛色の空が晴れて,虹が見える日が来るといいな。

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