Tuesday, July 25, 2006

「議定書」の道筋/Heinberg's Protocol.


つい先日、イタリアのピサで開催された第5回ASPO会議でのスピーチからいくつか、何回かに分けて紹介しようと思います。出典

ピークへの対応の一つとして,国際社会が「議定書」を批准するという考え方があります。気候変動を世界的な問題と捉え,「京都議定書」につながったように,オイルピークも地球規模の問題であり、国際的な合意を作り出すべきだという認識から出発しています。


この「議定書」の道筋はASPOでも,早くから解決策の一つとして試案の検討が進んでおり、すでにウプサラとリミニなどの試案があります。スピーカーの一人,リチャード・ハインバーグは、それをさらに発展させ,新刊「Oil Depletion Protocol」にまとめています。ハインバーグの「議定書」論旨はウエッブなどですでに発表されていますが,講義から要点を下記に紹介します。
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「議定書」ルートについては現実的な価値を疑問視する向きもあります。「京都」への過程でみられたように、交渉にばかり時間が費やされ,しかも,それぞれの国の事情が絡み,骨抜きにされてしまう可能性が大きいからです。「石油減耗議定書」にも、京都議定書を妨害し,骨抜きに暗躍した「炭素企業」が絡んでくるだけに,「京都」が繰り返されることは容易に想像がつきます。

個人的には国がこうした「議定書」を批准することももちろん大切で、批准を求めるロビー活動や市民運動にそれなりの意義があると思います。しかし,もっと大切なことは国や議定書に言われるまでもなく,個人がそれぞれ毎年2.6%、エネルギー消費を減らすよう自発的に取り組んでいくことではないかと思います。

●アブラを計画的に管理して使う国際体制が作られなければ,アブラを巡りあらそうことになる。
●減耗議定書の核となる考え方自体はとても単純で、それぞれの国が、世界の石油減耗率(現在は2.6%と見積もられている)と同率で石油消費を減らしていく。生産国はこの減耗率以上の生産を行わない。
●遅かれ早かれ,今世紀末までには、再生可能資源に頼らなければならないわけで,それらに今から投資しておくことには、大きな意味がある。
●議定書体制のもとで、アブラ漬けな近代農業は早急に再編成されなければならない。農業は「労働集約的で,地場の有機農業」に再編され,パーマカルチャー技術は、エネルギー降下時代を耐えぬくためにますます重宝されるだろう。野菜を庭に作ると行った単純なことから,それに取り組むことができる。第二次世界大戦中、野菜の4割は裏庭で作られていた。
●石油減耗は我々がどう計画を立てようが避けられないことではあるが,計画的に対処した方がダメージが少ない。スゥエーデンではすでに、年率2.6%を上回る率で石油消費の削減に取り組んでいる。「議定書」を批准した国が栄え、それをみてほかの国も批准するだろうから、特別な誘因は必要ではないだろう。
●「議定書」批准には第三者による国際的な監査を受けいることが義務づけられる。「議定書」にかかわらず、ガラス張りの監査は今でも,のどから手が出るほど望まれることである。
●ピークに達する前に「議定書」が発効することが望ましいが,そのあとでも、遅すぎるということはない。故意にこのプロセスを遅らせる国は、最もダメージを受けるだろう。「議定書」を実行に移す鍵は、先進国が輸入割当を導入することだ。
●長い目で見れば、「議定書」は,エネルギー下降時代を乗り切るのに,市場や価格動向に任せるよりもずっと効果的なメカニズムになるだろう。エネルギー下降を市場に任せれば,価格は不安定になり、新時代への「適応」が妨げられるが、「議定書」なら価格の大きな揺れを和らげることができる。高値が必要だが、安定していなければならず、その安定こそ「議定書」がもたらすものだ。

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