Friday, August 04, 2006

オーストラリア人はクルマ好き/We love our cars, we Australians.

オーストラリアの中央銀行、連邦準備銀行(RBA)は2日、公定歩合を年率0.25%引き上げた。引き上げも、引き上げ率も大方の人間が予想していただけに,イスラエルのレバノンでの蛮行を伝えるニュースより大きな取り扱いをされたことが少し不思議ではあります。


この引き上げで公定歩合は年6%になり、それが住宅ローンやクレジットカードの率を押し上げ,借金漬けの人に打撃になるだろうというのが大方のメディアの論点だ。大騒ぎするのは、6%という区切りのいい数字であり,また、それを越すのが5年半ぶりという心理的な要因が大きい。

金利引き上げの理由として、消費者物価の上昇が挙げられている。消費者物価指数は4月から6月にかけ、1.6%(年率換算4%)上昇し、これはオ版消費税(GST)の導入された2001年以来の上昇で、それをのぞけば1995年3月以来の上昇になる。インフレ抑制が使命の連邦準備銀行は、金利を上げるしかない。

消費者物価のなかでも特に高騰したのが食品価格。この3ヶ月で食品価格は全体で4.1%、果物の価格は52%もあがっている。果物価格高騰の主犯と目されるのはバナナ。かつては安くて手軽に食べられたバナナも、3月にサイクロン・ラリーが、全国の8割から9割近くを生産するクイーンズランド北部を直撃して以来,簡単には口にすることのできない高級果実になってしまった。

バナナを筆頭とする食品と並び,物価高騰の原因となっているのはガソリン価格。ガソリンの値段は今年にはいってから20%近くあがり、シドニーのドライバーは週に200ドル以上もクルマを運転するだけに支払っているという統計もある。

これについて、ハワード首相は「ガソリン価格は私の政治生活の中でも一番大きな悩みの種だ。普通のオーストラリア人に大きなインパクトをもたらすからだ」と発言していいる。ようやく、ハワード首相もオイルピークが生活全般にもたらす影響にようやっと気づいたか。と思いきや。
「だって、オーストラリア人はクルマが好きだから」。
Adelaide Advertiserより。

やれやれ。
クルマを使う必要がなければ運転しないという人はたくさんいるでしょうが,それが個人の選択,し好にすり替えられ、「国民性」にまで昇華されるとは。

それだけでなく、ハワード首相はバナナやガソリンの「価格上昇は、どんな政府にもいかんともしがたい不可抗力である」と発言している。

あらあら。
サイクロンやハリケーン、台風がますます凶暴になり、しかもその頻度が増す,ってのは温暖化の兆候だと言われていますが,そうだとすれば温暖化を認めることを拒否し、アメリカと並び京都議定書への署名を拒んできたハワード政権には、バナナ価格の高騰の責任の一端がないとはとても言えません。

ガソリン価格の高騰そのものは国際市場が決めることであり,確かにそれぞれの政府にはいかんともしがたいことかもしれない。しかし、ガソリンがどんなに高騰しても,それが「中毒」と自嘲的に形容されるほど必要でなければ生活への影響は少ないだろう。例えば,通勤のためにクルマを運転しなくていい、買い物に出かけるのにもクルマを使わなくていい,食料を手に入れるのにもガソリンを消費しなくていいとしたらどうだろう。ちょっとやそっと,ガソリンの価格が上がったってへっちゃらだろう。政府にはいくらでもできることがあるのです。ガソリン価格の高騰そのものが問題なのではなく,それに首根っこをつかまれた経済,暮らし方、社会のあり方が問題なのだ。

ガソリンがなければ暮らしは立ち行かない,しかも,自分たちではどうすることもできない,ハワード首相の発言は典型的な中毒者の独白だ。

それもあってか、消費者物価指数からガソリンと食物を除こうとする動きがある。あたかも,ガソリンや食物の高騰が一時的なものであり、それらを除外すれば決して物価は上がっていない、とでもいうかのように。アブラ中毒ではオーストラリアに勝るアメリカでも同様な手段がとられ,経済の「真の」状態を示す指数が発表されている。しかし、これはインフレの現状を覆い隠すだけで、小手先の数字いじりにすぎない。ヤクが切れればブルブルと震える手で,盗みでも詐欺でも何でもあり、藁にもすがる中毒患者が、ヤク代さえ除けば家計は健全だというようなものだ。

No comments: