千葉県では「自転車利用の増大に対処し、自転車交通の安全と円滑を確保するとともに、スポーツ・レクリエーション等を通じ心身の健全な発達に資するため、自転車道の整備を推進」している。震災で破壊された個所もあるが、利根川沿い、外房にはかなり長いサイクリングロードが整備されている。
サイクリングロード地図
こうした専用道路も大切だが、本当に「心身の健全な発達に資する」ためならば、レクリエーションやレジャーとしてではなく、普段の生活の脚として自転車の利用の促進を図りたい。自転車が使いやすい町になれば、クルマの利用が減り、都市の渋滞緩和、大気汚染の防止、温暖化ガス排出抑制にもつながる。
●現状。
社会実情データ図録より転載
県別で見ると千葉県の人口100人当たりの自転車保有台数(推計値)は埼玉、大阪などに次いで多い。比較的平坦であり、電車との接続が容易な都市部での利用が多いと思われる。
ちなみに自転車の普及が一番少ないのは沖縄県。沖縄は肥満度(男女とも)の一番高い県でもある。肥満の原因は過食と運動不足だと言われ、結果は医療体制への負担となる。沖縄では肥満と糖尿病が増えている。アメリカ式のファストフードが本土に先駆け60年代からあり、脂っこいものを大量に取込む食文化が広がっていた。米軍基地のもたらした健康被害のひとつと言えるかもしれない。本土の各県でも肥満率が高くなっている。食生活の改善、そして運動が医療体制への負担を減らす予防となる。肥満を防止し、医療体制への圧力を減らすためにも自転車は効果がある。
社会実情データ図録より転載
●世界の状況
社会実情データ図録より転載
12の国について、交通手段別のトリップ数構成比のグラフがある。出かける時の手段に自転車が使われる比率が大きい順に、オランダ、デンマーク、日本、ドイツ、スウェーデン、スイス、オーストリア、英国、フランス、イタリア、カナダ、米国となる。
カナダ(74%)や米国(84%)は自動車の比率が高い。それが国民の運動不足を招き、肥満比率の高さにつながっている。
●未来からの俯瞰
IEA(国際エネルギー機関)が認めるように在来型のアブラ(いわゆる普通の原油)は2006年に生産ピークを迎えた。それ以降、エネルギー効率の悪い油田(たとえば深海油田や極地の油田)、タールサンドやオリノコ原油などの非在来型のアブラの比率がどんどん高まっている。アブラの価格は10年前に比べ、5倍近くになり、これからも上昇していくだろう。
石油時代の後半に差し掛かり、これまでのようなエネルギーを大量に使う生活は根本から揺るがされる。
日本では輸入される石油の4割近くが運輸に使われている。ピークオイルを過ぎた時代、これまでのように交通、運輸をアブラに依存していくことは難しい。
そして何より、自転車は陸上の移動手段の中で、もっともエネルギー効率が良い。
社会実情データ図録より転載
●モデル
都市部では、オランダやドイツの諸都市のように、普通の道に自転車道を設ける。または場所によってはクルマの乗り入れを禁止する。駐輪場を市内各地に設けるなどして、とにかく自転車を使いやすくする都市計画が望まれる。クルマを使いにくくし、自転車(や徒歩、公共交通機関)を奨励する様々な仕掛け、仕組み、措置が必要になる。
自転車製造業、町の自転車屋、自転車の修理や再生などのほか、自転車タクシーなどが雇用を生み出し、自転車の利用により、健康が維持され、医療体制への圧力も弱まるだろう。
ベロタクシー