Monday, February 14, 2011

輸出崩壊/Saudis in Audis

エジプトでは大統領が実質的に退任し、中東情勢は一息ついています。産油国を中心に、高騰する食糧価格に対する不満をなだめるため、ばらまきが続いています。エジプトに誕生する新政権が慢性的な不満に対する若者たちの不満を果たして抑えておくことができるでしょうか。これから慢性的に続く食糧高騰の原因のひとつは、アブラの需要供給状況の逼迫です。主要な産油国、輸出国の動向が気になります。

ロイターはジェッダ発でサウジアラビアが国内のエネルギー需要を削減するため、家屋に断熱材を導入したり、節水などに投資することを伝えています。これらの策で、エネルギー需要の4割の削減を目論んでいるそうです。

Energy Export Databrowserより転載

上のグラフで灰色の部分が総生産を表し、みどりの部分が世界市場に出回る量を表しています。注目しなければならないのは、下の方からじわじわと鎌首をもたげている黒い線です。これは国内消費を表しています。

サウジの現状のエネルギーミックスを同じくエネルギー輸出データブラウザーから見てみましょう。



サウジアラビアの電力使用の7割から8割はエアコンで使われるということなので、家屋に適切な断熱材を施せば、国内消費が4割ほど減るという読みもまあ、うなずけます。発電用も含め、サウジではアブラと天然ガスが国内のエネルギー需要をほとんどすべてまかなっており、ここ数年その消費が急激に伸びていることがこのグラフから分かります。サウジなど産油国はアブラの値段が上がれば上がるほど、潤います。そうして得た富が社会全体にまんべんなく回ることはありませんが、それでも国内における消費が増えていくことがこのグラフから分かります。グラフは2009年のBPの統計数字に基づくものですが、これによれば、国内のエネルギー消費は前年比4.2%の伸びです。先のロイター電はOPEC諸国の電力需要の増加を年率8%としています。こんな伸び率が9年続けばエネルギー需要は倍増してしまいます。

さて、サウジをはじめとする産油国の富裕化、そして国内におけるエネルギー消費の伸びは日本やニュージーランドなど、アブラの輸入国にとってどんな意味を持つのでしょうか。また、今回発表されたようなサウジの省エネ策の如何がどんな結果をもたらすのでしょうか。
これはホルムグレンが『未来のシナリオ』で取り上げていますが、いわゆる「アブラ輸出の崩壊」という問題です。産油国における国内消費が増えていけば、世界市場に出回るアブラの量は相対的に減ってしまうということです。一番上のグラフでも、みどりで表されている量が黒い線が這い上がってくるにつれ、減っているのが分かります。これが世界市場に出回るアブラの量です。ロイター電は2028年(わずか17年後!)には世界市場に出回るアブラの量は現在よりも一日につき約3万バレル減り、7万バレルほどに減ってしまうだろうと伝えています。
主流のメディアが「アブラ輸出の崩壊」を取り上げるのは珍しいことで、それなりに評価しなければなりませんが、この計算はかなり楽観的です。国内消費の伸び、そして、現在稼働中の油田の生産の鈍化についての見方がきわめて甘いと思います。たとえこうした楽観的な読みが当たってたとしても、需要と供給が著しく逼迫した状態ではこれだけの量が市場から消えてしまうことは大問題です。オイルピークは生産が頭打ちになるということですが、その影響は玉突き式に社会の隅々にまで波及します。「輸出の崩壊」はその一例に過ぎません。
サウジアラビアでは省エネだけでなく原発まで含めたエネルギーミックスの多様化に取り組んでいるそうです。化石燃料の国内消費を減らすことができれば、それだけ、輸出に回せるアブラも増える。外貨も獲得できるということが、その理由として発表されています。輸入国のほうとしても、とてもありがたいことで、その点では利害が一致します。しかし、産油国の国内消費削減がうまく行くかどうか、その影響は輸出国と輸入国では大きく違ってきます。アブラ輸出国の方では、消費削減にたとえ失敗しても、(もちろん、食料価格への波及など間接的には大きな問題だろうが)直接、困ることはない。しかし、エネルギー輸入国にとっては文字通り死活問題になるでしょう。
それぞれの自宅でも、あのサウジアラビアでもやっているということを励みにして、ひっちゃきに贅肉をそぎ落とすきっかけにしたいものです。

Am not sure if I like it, found it a bit crass, but it sums up the feel, here's Saudis in Audis by GoRemy.

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