Tuesday, December 06, 2005

オイル・ピークに対応しエネルギー政策変更の兆し?/Review of energy policy in the US?

世界で生産される石油の1/4を消費するアメリカは、オイル・ピークをどれほど真剣にとらえているのか。それを考察する記事が12月1日付けのFalls Church Newsに載っている。

ピークについてブッシュ大統領は聞き及んでいるのだろうか。遅くとも(北半球の)昨年の夏には聞いていたはずだ。ガチガチの保守で大統領に近いとされるロスコー・バートレット議員(メリーランド州/共和党)が、ホワイトハウスに出かけて説明したと本人が言っている。バートレット議員はこの問題を議会でいち早く取り上げ、11月中旬、オイルピークに関する決議を下院に提案した人物だ。


11月21日付けのglobal public mediaによれば、バートレット議員の提案した下院決議の要旨は下記のとおり。
http://www.globalpublicmedia.com/articles/572

1)エネルギーの値段を手頃に保ち、環境への影響を抑え、なおかつ貿易赤字を抑え、経済繁栄を保っていくため、合州国は石化燃料の生産効率を高める一方、再生可能なエネルギーや持続可能でクリーンなエネルギーに基づく経済への移行ヘの努力を加速し、迅速に行動するべきである。
2)合州国は同盟国とともに、「月へ人間を送ったアポロ計画」に匹敵する規模、創造力、切迫感をもつエネルギー計画を打ち立てることで、ピークが引き起こす問題に総合的に対処するべきである。

さて、オイル・ピーク問題を聞かされていたとしても、大統領/政権の対応はこれまで生産増加と節約を口にするくらいで、生温いものだった。

ところが12月1日付けのFalls Church Newsによれば、ブッシュ政権のエネルギー政策にオイル・ピーク問題を反映した変化の兆しが見られるそうだ。以下は、Falls Church Newsでこれまでもいくつか、ピークに関する記事を書いてきたトム・ホイップルによる記事の要約。(記事の中で言及される答申について、いつ頃出るものなのか、NPCに問い合わせのメールを送ったが、今のところ、返事は来ていない。)
http://www.fcnp.com/539/peakoil.htm

まず、USA Today(11月24日付け)に、エネルギー省長官が全国石油審議会(NPC)に「業界が経済を損ねない価格で十分な量の石油と天然ガスを製造する能力の研究」を10月5日に要請したという記事が載っている。このUSA Todayの記事は、たぶん、政権からのリークによるものだ。

さらにその翌日、より保守的でよりブッシュ政権に近いとされる ワシントン・タイムズがピークについての記事を載せている。IEAの首席エコノミストが前の週に外交評議会で行ったスピーチに基づくもので、表面上は石油はまだたくさんあり、十分な投資と新技術で乗り切れるという楽観主義に満ちていたが、すべてが順調ではないことを示す徴候は行間から読み取れる。

NPCは石油やエネルギーの大企業経営責任者175人ほどからなる組織で、トルーマン大統領が1946年に設立した、エネルギー問題に関する諮問機関。現在はエクソン・モービルのCEO、リー.レイモンドが会長。

業界のリーダーが答えを求められているのは「差し迫ったオイル・ピークは現実のものなのか」ということだ。これから何年もアメリカが必要とする安い石油を、業界は供給し続ける能力があるのかどうか、はっきりしろ、と。エネルギー政策が現行のままでいいのか、それとも、方針変更が必要ならば、そのための理由を求めているのである。政権がこういう要求を業界に求めること自体、それほど遠くない将来、政策の変更があり得ることを示す徴候である。

もし、業界からの答えが、「原油供給は少しきつくなっておりますが、議会が我々の欲するところに、望むようなものを建てさせていただければ、しばらくはまだ大丈夫です」というものなら、ブッシュ政権はアラスカでの原油採掘に援護射撃を求めるためだけに研究を要請したことになる。

しかし、もし業界からの報告が、安い石油時代が終焉にさしかかっていることを正直に認める内容ならば、状況は一変する。報告書が「ピーク・オイル」という言葉に言及するだけでも、政策変更が差し迫っていることを示す興味深い徴候になる。
(6/12/5)

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