世界の液体燃料生産が新たな頂上に到達しました。
国際エネルギー機関(IEA)が10日に発表した数字によれば、今年11月、世界全体では日産8810万バレルのアブラが生産されました。これは、2008年7月の記録を更新し、人類史上でかつてない規模の液体エネルギーが生産されたことになります。
2008年7月には原油価格が1バレル150ドル近くまで上がり、それが世界の金融危機の引き金になりました。原油の値段はその後、一時40ドル近くにまで下落しましたが、各国政府が税金を投入し、景気回復にともない、アブラの需要も増えて来ています。やはり10日には、ここ2年で最高の値をつけました。
スチュワード・スタニフォードのEarly warning より。
この数字で注意しなければならないことは、この数字は原油(プラスコンデンセート)のみの数字ではないことです。アブラというと世間一般では原油をイメージしますが、この数字にはそういう「在来型」の原油だけではなく、カナダのタールサンド、ベネズエラのオリノコ超重質原油など「非在来原油」も含まれます。それだけではありません。液化石炭、液化ガス、エタノールなどの人造石油も入っています。
「非在来」や沖合深海油田、人造石油に共通するのはEroei(エネルギー収支)がきわめて低いということです。Eroeiについてはあまり理解されていませんが、簡単にいえば、エネルギー投資とエネルギー収穫の割合です。どんなエネルギーを獲得するためにもエネルギーを使わなければなりません。この効率が悪いと、社会が獲得できるエネルギーもかなり下がってしまいます。1930年代あたりの油田では、1のエネルギーを投入して100のエネルギーを獲得することができました。それが1対30になり、最近の油田は1対15くらいだそうです。かなり落ちてきたとはいえ、人造石油などに比べればかなりましです。
D.ホルムグレンの近刊、『未来のシナリオ』より転載。
つまり、味噌も糞も一緒にして液体燃料をすべて含めた数字で見ると人類はこれまでにない量のエネルギーを獲得したということです。しかし、エネルギー収支という質のことまで考えると、実際に使える正味のエネルギーはそれほど増えていないのかもしれません。
No comments:
Post a Comment