英国のエネルギー担当相、クリス・フーンは12月16日に放送されたラジオのインタビューでオイルピークに言及し、それが国の舵取り、政策立案に影響を与えるとしています。
「アブラがいつ頂上を越し、生産が減りだすのか、しっかりとはわからない。しかし、国としては、こういうような市場に首根っこをつかまれるようではまずい(...we don't know when exactly the oil is going to start peaking and production is going to start running down, but...we don't as a nation want to be putting ourselves in hock...to these sorts of markets...)」
BBCのラジオ4、トゥデイという番組の中での発言です。
(引用した発言は2分15秒目くらい)
現職の大臣や首相がオイルピークに言及することはまれです。現職の首相ではニュージーランドのヘレン・クラーク首相が2006年4月に言及しているくらいでしょうか。英国ではブレア政権の環境大臣を務めたマイケル・ミーチャーがピークについて発言していますが、現職ではありませんでした。
今年の3月、時のブラウン内閣のエネルギー担当相がピークに関するサミットを開き、ピークの論客、クリス・スケボウスキーやトランジション運動の創始者、ロブホプキンスを招いて意見を聞きました。おっかなびっくり、問題を聞くということで、それがすぐ政策に反影されることはありませんでした。だから、現職閣僚ではたぶんはじめてではないでしょうか。
ピークの時期については、あの保守的なIEAですら、フツーのアブラのピークは2006年だったと過去形で語っているのですから、もっと踏み込んでもよかったかもしれません。しかし、少しずつではあれ、政策担当者の意識が変わっていることは事実です。
英国でここまでピークに関する意識が高まっているのは偶然ではありません。英国はわずか10年ほど前には、イランやクゥエートと肩を並べるアブラ輸出国でした。それが虎の子の北海油田がピークを前のばしして、絞れるところまで絞ってしまったためか、いったんピークに達したあとは恐ろしい勢いで減耗しています。1980年以来25年ぶりにアブラの輸入国になったのはつい5年前のことです。(ブレアと石油参照)
英国では産業界においてピークを死活問題としてとらえ、ピーク・オイル・タスクフォースが結成され,真剣な取り組みも始まっています。これにはバス会社のステージコーチやリチャード・ブランソン率いる航空会社のバージンなど運輸輸送会社だけでなく、ソーラーセンチェリー(英国一の太陽エネルギー企業)などのエネルギー企業が参加しています。
早くからこの問題に関心があり、労働党内閣の再生可能エネルギー諮問委員も務めた(2002年〜06年)ジェレミー・レゲット(日本でも『ピークオイル・パニック』が邦訳出版されている)あたりが中心になっているのでしょう。
いわば、英国はピーク以後の時代にすでに突入している、ピークは際物でも「説」でも傍流でもない。左翼やユダヤの陰謀でもない。それに関して産業界でも取り組みが始まっている、政治の場でもそれなりの興味を引いてきた。今回のエネルギー担当相の発言もそうした理解が世間一般に広がっていること、切羽詰まってきたことが反映されただけなのかもしれません。
日本はどうなのでしょう。まだ、そこまで切羽詰まっていないのかな。それとも自分たちは大丈夫だと思い込んでいるのでしょうか。代替がきっと見つかるだろう、なぜだかわからにけど、そういう期待があるのかな。企業にも政府にも、国民の間にもそういう気持ちがあるのかな。どういう理由にせよ、オイルピークが国会で取り上げられたと聞いたことがありません。企業人でピークを理解している人もあまりいません(数少ない例外はアシスト社のビル・トッテンくらいかな)。
金儲けにあくせくするのもいいけど、真剣に未来のシナリオを考えたほうがいいんじゃないかなあ、という気もします。
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