福島原発事故以降、電力各社は原発の再稼働がままならないまま、 ほかのエネルギー源へのシフトを迫られている。 なかでも天然ガスへの依存が増えている。 脱原発論者の中にも天然ガスがあるから全部の原発を止めても大丈 夫だと主張する人もいる。 世界的には2005年から原油生産が天井に突き当たった感じで生 産が伸びず、原油価格の高騰がつづいてきた。それを受け、 玉突き状に天然ガスの需要が増えている。
増加する天然ガス需要に応えるように天然ガスがたっぷりとあるか のような楽観論が広がっている。4月5日付けの東京新聞も「 埋蔵量は40年分/代替エネに日本期待」 という見出しでアメリカのシェールガス・ブームを報告している。 シェールガスというのは頁岩層から採取される天然ガスの一種で、 埋蔵量ので1/3を占めるといわれ、 今世紀にはいり特に注目されている。 従来のガス田ではないので非在来型と呼ばれ、 採取用にフラクチャー(割れ目) をつくるのでフラッキングと呼ばれる技術が導入されるようになっ て、 浸透率の低い頁岩層からの商業的な生産が可能になったガスだ。 ガス鉱区の一つ、 バーネットで竪坑による生産は1982年に始まっていたが、 水平採掘と高圧水や化学薬品、 泥などで割れ目を開くフラッキングの導入でシェールガスの生産は 飛躍的に向上した。 ガス櫓の数は2003年に3000だったのが現在は9000に増 加した。
このシェールガス・ブームを受け、 オバマ米大統領は1月末に遊説先のラスベガスで「 我々の足元には、 アメリカを100年支えられるほどの天然ガスが眠っている。 我々は、天然ガスにおいてはサウジアラビアだ。 大量の資源を手に入れたんだ」と高らかに宣言した。
だが、はたして天然ガスは本当にそれほどの量があるのだろうか。 天然ガスは膨大な埋蔵量があることは間違いないが、 オバマ大統領がいうように「アメリカを100年支えるほど」 もあるのだろうか。東京新聞のいう「40年」 の出所は分からないが、オバマ大統領の「100年」については、 元ネタはどうやら「ガス可能性委員会(PGC)」 が2011年4月に発表した報告書だと思われる。
この報告書はこれから人間が手にできる天然ガスの量を2, 170兆立方フィート(tcf)と見積もっている。 それを2010年の消費量である24tcfで割ると95年になる 。オバマ発言にみられる「100年」はここが出所だ。 この報告書の「100年分近く」が一人歩きしている。
この報告書をまとめたPGCとはいったいどんな団体かというとガ スの業界団体で、委員長のLarry M. Gring自身、Third Day Energy LLCというテキサスのガス会社の社長だ。
というわけで、 この報告書そのものが業界に都合のいい内容のものであり、 そこに書かれている数字もそのまま真に受けるのではなく、 投資を呼び込むためのものと理解した方がいいだろう。
細かく見るとまず2,170兆立方フィート(tcf) という埋蔵量だが、このなかには「確認されたもの」、「 可能性があるもの」、それだけでなく「 もしかすると採掘できるかもしれないもの」 がすべて含まれている。 この数字にはほとんど確実に手に入りそうなものから、 どこかにあるかも知れないものまでみんな含まれているのだ。 存在が確認され採掘が確実なものに限ればわずか273
tcfにすぎない。仮にその全部が採掘できたにしても、 2010年の消費量で計算すれば、 たかだか11年分にしかならない。東京新聞の「40年」 にも遠く及ばない。「可能性があるもの」は536.6
tcfで、これは現存するガス田に確認はされていないものの、 可能性があるのではないかという量。「未発見のガス田」 が687.7
tcfで、これは何かというと、 まだ発見されていない新しいガス田からの量。 どこかにあるだろうが、 まだ見つかっていないガス田を見込んだ数字だ。 そして最後の518.3
tcfはもっときわどいspeculativeという分類だ。 投機的とか事実に基づかないことを表す言葉で、もしかすると、 どこかにあるかも知れないくらいの感じ。さらに176
tcfが石炭層にあるんじゃないかと思われるガス。当然だが、「 確実」に比べると、どんどん希望的な観測度が強まっていく。 もう一度繰り返すと、 確実に採掘可能なもののすべてが採掘できたにしても、 たかだか11年分にすぎない。「100年分」だとか、「 40年分」という数字も中身をしっかりと見てみれば、 業界の希望的観測にすぎないことが分かり、 かなり危なっかしいことがわかる。
また、「100年分」とか「40年分」 という時に採用される消費量は現在のものであり、 それが増加することは見込んでいない。PGCの報告書では、 天然ガスは二酸化炭素の排出量が少ないから、 石炭に代わり発電に使うとか、トラックの燃料にするとか、 消費の増加を訴えている。 ガス推進勢力は投資を呼び込みたいのだが、 ガスにエネルギー源をシフトすれば、 いったん作った設備は変えられない。ガスを使い続けるしかない。 そして、消費量が倍増すればたとえ「100年分」 あるガスも50年しか持たないことになリ、 11年分は5年半しか持たない。 天然ガスも万能の切り札ではない。
増加する天然ガス需要に応えるように天然ガスがたっぷりとあるか
このシェールガス・ブームを受け、
だが、はたして天然ガスは本当にそれほどの量があるのだろうか。
この報告書はこれから人間が手にできる天然ガスの量を2,
この報告書をまとめたPGCとはいったいどんな団体かというとガ
というわけで、
細かく見るとまず2,170兆立方フィート(tcf)
tcfにすぎない。仮にその全部が採掘できたにしても、
tcfで、これは現存するガス田に確認はされていないものの、
tcfで、これは何かというと、
tcfはもっときわどいspeculativeという分類だ。
tcfが石炭層にあるんじゃないかと思われるガス。当然だが、「
また、「100年分」とか「40年分」
No comments:
Post a Comment