Friday, December 21, 2007

乳搾り/the land of milk (and money).

いずれ、乳を生産する動物は飼いたいとは思っていたけれど、現実には本をぱらぱらめくるくらい。牛がいいのか、それとも羊にしようか山羊なのかなんてペット選ぶような感覚であれこれ夢想していただけでした。
ニュージーランドは世界市場の3割以上を占める世界最大の乳製品輸出国だから乳製品も安いと思っていました。確かに乳業は輸出総額の2割、GDPの7%を占めるこの国最大の産業で、今年3月までの一年間に85億ドルの外貨を稼ぎ出す輸出産業の筆頭です(ちなみに外貨獲得第二位は木材で36億ドル、肉用子羊が23億ドル、肉牛が18億ドル、キィウィフルーツが8億ドル)。

しかし、引っ越して数ヶ月もしない10月にバターの小売価格が23%,チーズが7.3%,牛乳が3%の上昇。食品価格全体も去年の同時期に比べ3.6%の値上がりです。国連FAOによれば、乳製品の国際価格は前年に比べ100%から200%の値上がりなので、それに比べれば微々たるものですが、この傾向はこれからも続きそうです。それにつれ、自分のところでミルクを生産する必要性もどんどんと高まっていきます。

これで思い出すのはオイル・ピークに関連し,生産と国際市場に出回るアブラの量に関する説です。最近、NY Times(12月9日付け)Wall Street Journal(12月12日付け)など米国主要メディアで取り上げられていますが、ダラスの石油地質学者、ジェフリー・ブラウンが去年あたりから唱えているものです。

(日本語では「ん!」がこの記事を要約しているほか、取り上げています。また、Dr.Kさんのブログでもとりあげられています。)

簡単に言えば、産油国がアブラ景気で潤い、経済発展するにつれ,自国のアブラ消費が増加する。その結果,たとえ生産が増加しても、国際市場に出回るアブラの量は落ち込むというものです。ブラウンはアブラ輸出のトップ5カ国におけるアブラの消費は、これから10年の間に一日あたり500万バレル増加するだろうと予想しています。つまり、10年後にはそれだけのアブラが国際市場から消えてしまうというわけです。

たしかに、インドネシアや英国の例はそれを証明するかのようですが、ことはそれほど単純じゃないでしょう。

アブラ会社は民営であれ、国営であれ、国の外で高く売れるものなら,国内の価格をつり上げるもので、「国際価格」を払えない人は,国の外であろうが中であろうが知ったことじゃない。

ニュージーランドでも、国内消費者のために国最大の企業である乳業会社のフォンテラ社が牛乳や乳製品を安くするなんてことはないでしょう。企業というものはカネの色は選ばず,どこの国のどんな人でもかまわず商品を売りつける。それが使命なのですから。

それが高じると飢餓輸出になります。国内の人間が飢えていようとも輸出して金儲けをする。最近では,ジョージ・モンビオも取り上げていますが、スワジランドの例があります。ひどい干ばつのおかげで国民の4割が飢え、食料援助をあおいでいる。にもかかわらず、主食のキャッサバがバイオ燃料生産に回され、輸出されているのだそうです。10月末、国連人権委員会、食料の権利担当特別報告者ジャン・ジーグラーが口にできる作物をバイオ燃料生産に回すことは「人類に対する罪」だと言いましたが、スワジランドではそれが行われています。

アブラはちょっと,まだ自ら生産してまかなうところまで考えてませんが、乳製品はなんとかなるんじゃないか。うちで消費する分くらい、生産できるんじゃないか。

近所の家畜エージェントに相談すると、羊毛価格の低迷に加え、乳製品価格の高騰のおかげで、このあたりでも羊から牛に切り替える農家が増えており、値段が上がっている、しかも大口取引がほとんどで、一頭だけなんてのはほとんどでてこない。とのことでした。

このあたりで伝統的に羊が飼われてきたのは乾燥していて酪農には不向きだったからです。羊を飼うのがやっとだった場所で、産業としての酪農に切り替えるには、じゃぶじゃぶ水を撒いて牧草を育てなければなりません。灌漑設備などのために巨額の借金をしなければならず、ちょっとやそっとくらい乳製品の価格が上がっても、しばらくは首が回らない農家ばかりだそうです。

こりゃ山羊がいいかな、しかしフェンスを強化しないといけないなあ、なんて考えていたら、家畜エージェントから連絡。珍しいことに手頃な価格で元ペットの乳牛が売りに出たそうで、乳搾りの経験も設備もないのに、早速購入しちゃいました。





経験がないのは牛の方も一緒。ジェニーと呼ばれ、ペットだったとかで、これまで乳を搾られた経験がないそうですが、うちに到着そうそう子牛を産んで、ぼちぼちと乳を搾られています。まあ、売りに出すわけじゃなし、うちで必要なのは毎日1リットルから2リットルです。柵につないだだけ、露天で、海を見ながら搾ってます。

2 comments:

Dr. K said...

いいですね、乳牛。うらやましい。

私は農耕馬として、木曽馬を飼いたいな、などと思案、先々週、牧場に見学したりしてきました。

提示していただいた飢餓輸出の問題を、じっくり考えてみます。

Dr. K said...

飢餓輸出について考えてみました。

石油輸出国は原油価格の高騰で潤い、経済発展するにつれ、自国の石油消費も増加する。その結果、生産の減少以上に貿易市場に出回る石油の量は激しく落ち込んでいく。
石油減耗によってもたらされるものは、石油輸出国経済の正のスパイラルであり、非産油国経済の負のスパイラルでしょう。
ここに石油の入手可能性は石油輸出国においてますます強化されていく構造をみる。

単純ではないのは、ここからでしょうか。

正のスパイラルにのる国には、日本の高度経済成長期に見られたような、中産階級の台頭が起き、逆に負のスパイラルに陥る国の中で今後起こることは、市民レベルでの格差拡大ではないのでしょうか。

日本の食糧自給率は低い。原油とともに高騰する食糧の調達に、はたして日本は外貨を優先的に割くのでしょうか‥‥ ?
飢餓輸出は日本にとって、ひとごとではないのかもしれない。