今朝、朝刊を見ると日本の捕鯨船団の母船、日新丸がグリーンピースの監視船アークティック・サンライズ号にぶつかってきたというニュースが大きく載っている。
日本では共同電で各地の新聞に配信されている。共同電は、船団を出している日本鯨類研究所の説明として「グリーンピース側の船が日新丸の右舷と後部に計2回ぶつかってきた」としているが、「日新丸が故意にぶつかってきた」とするオーストラリアの新聞報道とは大きく食い違っている。
ちょうど、衝突がおきた時、抗議船団のリーダー、シェイン・ラトンベリーはジ・エイジ紙(メルボルン)との衛星電話インタビューの最中だったから、状況描写は臨場感溢れたもので、こういうのを読むと、鯨研発表/共同電があやしく感じられてしまうのも無理からぬ話。
ジ・エイジ紙掲載の写真
こちらは、系列のシドニー・モーニング・ヘラルド紙に載った写真
以下、
ジ・エイジ紙
日新丸は僚船に鯨肉を積み移して、300メートルほど離れた地点から、ラトンベリーの乗り組む船の方へ向かってきた。日新丸は左舷から向かってきたが、国際海事法ではグリーンピースの船に進路保持の権利がある。
「こっちの船に向けて直角に突っ込んでくる。串刺しにするつもりだ」
AS号の船長はなんども警笛を鳴らし、無線で日新丸に航路の変更をよびかける。日新丸も警笛を鳴らしてくる。
AS号の船長は舳先を右に曲げたので、ふたつの船は平行になるように思えた。しかし、日新丸の船首はどんどん近付いてくる。
「こっちに向きを変えた、ぶつけてくるぞ。ちきしょう、ひどいことになる。船長がみんな、踏ん張れって言ってる」
特徴ある金属的なうなりが電話から聞こえてくる。
「舳先にぶつけられた。船首のマストが曲がってしまった。もう一度、ぶつけてくるぞ」
その衝撃で船尾が押されてたAS号は大型船の船体に押しあたる。
「こんどは水砲で水を浴びせかけてきている。おれたちはびしょぬれだ」
静かになり、日新丸は去っていったようだ。無線からはすでに海に入っていたゴムボートからの声が飛び込んでくる。「脇が1.5メートルほど、でかくへこんでる」
ーーー
衝突事件の前に、ゴムボートに乗ったグリーンピースの活動家が貯蔵船の脇に「鯨肉」ってペンキで描いたことがきっかけだとか、もっと過激な戦術を主張するシーシェバードという団体の船と間違えたのではないか、とか、いろいろ憶測が飛び交っているが、どうせ、誰も見てないだろうから、邪魔する連中を懲らしめてやろう、ってなことを日新丸がやったんでなければいいですけど。
左舷の船は道を譲らなければならないってのが海上交通のルールなんだそうで、「右舷にぶつけられた」って鯨研は説明しているけど、航路をあけなけりゃならないのは左のほうにいた日新丸のほうなのではないでしょうか。しかも衝突後、水を浴びせかけている。報道されるとおりだとしたら、かなり大人気ない行為だという印象を与えます。
日本側(というか、鯨研/水産庁/農水省、ですね)は、グリーンピースの船を、アメリカ政府のNaval Intelligence Civil Maritime Analysis Departmentに海賊だから、追跡してくれって泣きついているそうですけど、こんなことやるんじゃ、どっちが海賊なのか、わからない。
鯨研/水産庁/農水省は、これも「陰謀だ」とか「グリーンピースは売名行為のため、わざとインタビューをしている時にぶつかってきたんだろう」などと言い出すに違いないけど、アークティック・サンライズ号は949トン、日新丸は8030トン、サイズが10倍近く違う船でしょ。
百歩譲って、現在行われている捕鯨が科学的なもので、日本の科学者の主張が100%正しいとしても、それを政府主導でごりごりに押し進めることが「国益」に適うのか。国際的な立場にどんな影響を与えるのか、そろそろ、冷静に考えた方がいいのではないでしょうか。
捕鯨に関しては、ただでさえ、農水省/水産庁の役人のごう慢な態度、貧しい国に援助を与え国際捕鯨委員会の票を買い漁るやり方が報道されており、「醜い日本人」というイメージが広まっている。オーストラリアの保守勢力は、日本の国連安保理事会入りなど、国際的に発言力を増していこうとする姿勢を基本的には支持しているが、ごう慢で大人気ない態度を続けていると、そういう勢力すら離反させかねないでしょう。
No comments:
Post a Comment