Friday, March 31, 2006

オーストラリア、核拡散へ発進/Nukes au go go!


気候変動について協議するかのように喧伝された「亜太パートナーシップ(APP)」だが、結局は原発推進体制であることは以前、指摘した。

「クリーンで効率的な技術」ってのは原発のことで、原発先進国のアメリカ、日本や韓国、それにウラン資源を売りたいオーストラリアが中国やインドへ原発の開発を迫る、どうやら、それがAPPの構造のようだ」

そして、そのAPP構想が着々と現実化されつつある。皮肉なことに原発をクリーンなエネルギーと世界中を言い包め、原発産業の後押しをするアメリカとオーストラリアはともに京都議定書調印を拒否する環境汚染大国だ。

3月初め、ブッシュ大統領はインドを訪問し、F16やF18の売却だけでなく、技術や燃料の移転に関する原子力協力に合意した。インドには現在15基の原発があり、3,310メガワット(MW)を発電しているが、3年以内にはさらに7基(3,420MW)が完成の予定だ。インドは国内にウラン鉱床はあるものの、量は微々たるもので、それらの原発の燃料確保が急務になる。


ブッシュ大統領のあとを追うようにインドを公式訪問したのは「ブッシュの代官」を気取るハワード首相だ。出発するまではマスコミの質問に、「アメリカが認めたからといって、核拡散防止条約締結国以外ヘのウラン供給はしないというこれまでの方針を変えるつもりはない」と言っていたにもかかわらず、到着するや、掌を返して前言撤回。「インドが、それなりの国際査察を受けれることが前提だが、輸出は検討する」。

3月21日付けのアルジャジーラの報道によれば、ハワード首相はサイクロン・ラリーの見舞いに電話をかけてきたブッシュ大統領と
インドへのウラン販売について協議し、御墨付きをもらったということだ。どちらが言い出しっぺなのかは分からないが、これで核拡散防止条約(NPT)非加盟の核兵器国、インドへのウラン輸出は決まったようだ。たぶん、同じ電話で、もう一方の中国へのウラン輸出についてもブッシュ大統領は了解を求められたに違いない。

オーストラリアは2004年8月から中国へのウラン輸出協議を続けてきた。すでに細部まで交渉が終わり、4月上旬に温家宝首相が訪豪にあわせた発表を待つばかりだ。合意はウランの輸出だけでなく、中国にウラン採掘への参加を認める内容も含まれる予定で、中国マネーがウラン採掘に流れ込むことだろう。

原発推進には地球温暖化や気候変動対策が口実として使われているが3月3日付けのcountercurrents.orgが指摘するように、アメリカやオーストラリアがこれほど熱心なのは、中国やインドを化石燃料獲得競争から押し退けるのが本当の目的ではないだろうか。ブッシュ大統領はニュー・デリーで次のように発言をしている。

「インドの原発が世界の化石燃料需要を抑えることは、私たちの経済的な利益なのです。化石燃料への需要を押さえること、それはアメリカの消費者の利益につながります」

オーストラリアはアメリカのエネルギー戦略の一翼を担い、核拡散に大きく手を染めようとしている。

(とはいうものの、ウランなどの鉱産資源開発は連邦政府ではなく、州政府の管轄。なので、ハワード政権の一存だけでは進まない。現在、州政府はすべて労働党が政権にあるが、ウラン開発政策にはそれぞれの州で違いがある。世界最大のウラン鉱床、ロクスビー・ダウンズのある南オーストラリア州政府のラン首相は連邦政府の積極的な核燃料輸出を支持している。しかし、ウラン資源の豊富な西オーストラリア州やクイーンズランド州は採掘を州法で禁止している。これらの「反核」政策をとる州に連邦政府やウラン業界からの圧力がさらに強まりそうだ。)

Thursday, March 30, 2006

メキシコのカントレル油田がピーク/ Cantarell peaks.


オイル・ピークの古典ともいえるマシュー・シモンズの「twlilight in the desert(砂漠の黄昏)」をようやっと、読み終えた。ベールに包まれたサウジアラビアのアブラ事情、それに頼りきっている現代社会の構造を克明に記した内容で、なるほど、アメリカの重役たちが先を競って読んでいるってのも納得。

いますぐ日本でも緊急翻訳出版され、どこの図書館にも一冊ってなぐあいで広く読まれなければならない一冊です。

さてはて。

本から目をあげ、あたりを眺め回すと、世界は今まさにオイル・ピークって徴候があちこちに見えます。世界第二の埋蔵量の油田、クウェートの大ブルガンがどうやらピークに達したってことは以前紹介したが、3月16日付けのKnight Ridder Newspapersによれば、メキシコの大油田、カントレルもどうやらピークに達したようだ。


この油田は、1976年以来、日産百万バレル以上の生産をあげる大油田で、メキシコのアブラの6割を生産してきた。しかし、Knight Ridderが入手したメキシコ国営ぺメックス社の内部資料によれば、2004年の日産213万バレルがピークだったようだ。カントレルは昨年、200万バレル/日産を生産したが、今年は6%減の日産190万バレル、2008年には150万バレル(2000年の生産レベル)にまで落ちるだろうと予測されている。

メキシコは日産330万バレルの産油国で、アメリカにとっては第ニの石油供給国である。カントレルがピークに達した影響は小さくない。単純に、わずか2年後には一日あたり50万バレルいまよりも少ない石油でやりくりしなければならないということになるので、中東のアブラ依存がますます高まることは間違いない。

「困った時の中東頼み」で、世界中で大油田がピークを迎えるなか、中東はその減耗量の肩代わりを期待されている。しかし、中東にアブラは残っているのか。ピーク楽観者やピーク否定者の期待は巨大油田、ガワールを中心とするサウジの生産力であり、埋蔵量だ。逆にいえば、ガワール油田がピークに達すれば、もうすがりつくところはない。マシュー・シモンズはガワールなど、サウジの大油田にもピークの徴候が出始めていることを指摘している。世界はそれを知らされていないだけだ。

私たちはオイル・ピークという歴史的な瞬間を生きている。

Wednesday, March 29, 2006

逆巻く嵐は悪魔の爪/As happy as?


「風の爪痕もやがて消えるだろう魔の風は...」

ハリケーンだとか、サイクロン。名前は違っても、大きなのがニュースになるとつい口ずさんでしまうのは、「颱風歌」(作詞:松山猛)。

先週サイクロン・ラリーがクイーンズランド北部を直撃した時も、ニュースの合間に、昔よく聞いたアルバム、「黒船」を引っ張り出して大音量でかけてしまった。

「本日(3/20)早朝、ケアンズ付近にオーストラリア観測史上最大級のサイクロン「ラリー」が上陸!」シドニーの平野美紀さんのサイトが伝えています。まるでゴジラ来襲のような勢いですが、サイクロンは瞬間風速290メートルってなくらい、風が強かったようです。どちらかというと空の大怪獣ラドン、ですね。

この風でなぎ倒されずたずたになったのは家屋や建物やインフラだけでなく、農作物ももちろん、ばたばたと根こそぎにされ大きな被害を出しました。地元選出の代議士によれば、サイクロンの直撃にあったイニスフェイルとタリーで全国の9割近いバナナを生産しているのだそうで、それが壊滅。すでにその影響は全国に波及していて、近所の店でもバナナの値段は倍以上にはね上がっています。これを受け、これまで禁止されているバナナの輸入の是非を巡る議論も再燃しています。


サイクロンの通過したあたりはサトウキビの産地でもあり、そちらの被害もかなりなようで、すでに急騰している砂糖の国際価格をさらに押し上げそうです。オーストラリアでもサトウキビから醸造されるエタノールをブレンドしたガソリンがぼちぼちと出回っていて、いまはガソリンより安く売られていますが、こちらもサイクロンの影響で値上がりは必至でしょう。

ちなみに3月20日付けのブルームバーグは、「オイルより、金より、今、値上がりが見込まれるのは砂糖だ!」と砂糖の国際価格の急騰を取り上げています。急騰の理由は中国の需要増加に加え、市場に出回る砂糖が減ったため。世界第二の砂糖輸出国のタイが旱魃で生産が減ったこと、最大の生産国であるブラジルが4年以内にガソリン車の撤廃を掲げ、年産の半分以上をエタノール生産に振り向けたためだそうです。つまり、砂糖市場は温暖化による異常気象とオイル・ピーク対策のダブルパンチに見回れたということになり、当然ながら、現代社会を反映しています。

エタノールに関しては今日、ふたつおもしろい記事に遭遇。ひとつは、エタノールは持続可能でクリーンな燃料として代用油のひとつに掲げられているが、それを精製するために石炭をじゃんじゃん燃やしたエネルギーが使われていると暴露する記事、Carbon cloud over a green fuelが3月24日付けのクリスチャン・サイエンス・モニター誌に載っています。もうひとつは、シュピーゲル誌の記事で、森林資源からエタノールを精製し、2020年の脱石油化に向けて、国をあげて着々とまい進するスウェーデンの話。(Sweden Plans Wood-fueled Future)。どちらも時間があれば、御一読下さい。

エタノールは植物から作られるという理由だけで、クリーンで持続可能だというわけではなく、逆に温暖化ガスの製造に手を貸すこともある。でも、ちゃんとした文脈で、地元の持続可能な素材を利用すれば代用にはなる。ということです。アブラのように世界中どこでも同じように使える燃料は他に存在せず、そんなものを期待する方が間違い。これまでのような大量生産/大量消費式な考え方はオイル・ピーク後には通用しません。それぞれの場所で、使えるものを使っていく、ということになるでしょう。

今回のサイクロンで大きな被害を受けた地域も、単一作物を大規模な農場で栽培し、何千キロも離れたに大規模流通させるという近代農業生産システムの一部です。このシステムには経済的なメリットはありますが、単一な品種を数少ない場所で生産することを前提とするシステムはひよわでもあります。バナナもサトウキビもいろいろな場所で少しずつ作っていれば、一ケ所がサイクロンなどの被害を受けてもうろたえることはありません。クイーンズランド北部で作られたバナナを国中どこでも、いつでも安い値段で食べられる、そういう便利さは、どんどん高くつくようになります。特にこれから、こんな規模のサイクロン(北半球の人は颱風とかハリケーンと読み替え下さい)がごろごろやってくるようになるんだから、これまでの常識は通用しないでしょう。気候変動を引き起こした張本人である人間は、そのつけは覚悟しておかなければなりません。

そして、ポスト・オイルの文脈から見ると、やはり、石油の代替燃料を大規模生産によるバイオフュールに求めるならば、同じようにひ弱です。食用でもクルマ用でも、植物の生産はすべからく自然に曝されます。もちろん、砂糖やキクイモ、とうもろこしのように人間が食べられる作物をクルマを走らせる燃料に代えてしまうことの是非は問われなければなりませんが、それ以上に、それに頼ろうとすることは、きわめて危険です。

サイクロン襲来のなかにもオイル・ピーク、そして温暖化による異常気象の時代を過ごす現代社会が透けて見えます。

ちなみに前述の平野さんのサイトに次のような警告が載っていて、不謹慎にも笑ってしまいました。ケアンズのメイン・ストリートをワニや毒蛇がしゅるしゅる!したんでしょうか。後日談を聞いてみたい!

「猛烈な強風を伴ったサイクロン・ラリーの上陸で、ケアンズ近郊の河川が氾濫。これにより、川に生息しているクロコダイル(ワニ)や毒蛇などが流出した恐れが!川に近い場所や海辺、洪水被害地域には近づかないようにしてください。」