昨日の朝、起きがけにラジオを聞いていたら、来週から放送されるはずだったテレビ広告に横やりがはいったということを報道していた。
オーストラリアには地上波テレビ業界で作るコマーシャルズ・アドバイスという団体がある。商業広告がテレビで放送される前に、行き過ぎがないように監査するのが目的だ。その団体から放送に相応しくない、字句を変えるようにといちゃもんをつけられたのは、南オーストラリア州にあるソーラーショップが流そうとしたコマーシャル。
どんなお店かなと、ホームページを覗いてみると、ソーラーパネルから風力発電、ソーラー温水器など、いわゆる代替エネルギーを手広く扱う店のようだ。
予定されていたコマーシャルでいちゃもんがついたのは、報道によれば、南オーストラリア州立博物館館長のティム・フラナリーが語る「気候変動は、今日の人類が直面する最大の脅威です」という一節だ。フラナリーは国外でもよく知られる学者で、温暖化に警鐘を鳴らす著作がいくつもある科学者だ。
ソーラー・ショップの社長の手許に届いたコマーシャルズ・アドバイスからのメールは、この検閲が政治的なものであることを臭わせる。
「放送サービス法の解釈によれば、このコマーシャルは政治的な言質を含んでおらず、政治的な放送にともなう認可やその旨を伝えることが必要だとは見なしません。しかし、コマーシャル冒頭で発せられる、「気候変動は、今日の人類が直面する最大の脅威です」というコメント、これは問題があります。広告の正確さを確保するために、この部分を見直していただけませんでしょうか。気候変動問題を説明するために別な言い回しを考えていただけませんか」
ソーラー・ショップの社長は、「オレたち、キョートをすでに実行しているもんね」というコマーシャルの別な部分が政府の逆鱗に触れたんじゃないかと考えている。これはもちろん、京都議定書を拒否するハワード政府を当て擦るからだ。
実際、連邦政府からの直接的な政治的圧力が働いたのか、もしくは民間団体であるコマーシャルズ・アドバイスが政治的な配慮をして自己規制したのか、それはいまのところ判らない。もともと、オーストラリアの放送業界は数少ない保守的な人間に牛耳られているから、後者の可能性も高い。
こうしてマスコミや政府権力は隠そうとするが、気候変動は目の前にある。はたして、それが、人類が直面する最大の脅威なのかどうか。それぞれ、明日の朝、起きたら、窓をあけて判断してほしい。
なお、この問題を報道するラジオ番組のスクリプトはABCのサイトで読める。