説明されなければなんでもない写真なのに,その意味を聞かされると泣いてしまう。
アーウ゛ォ・ペルトを聞いていたりしたら、いちころだ。
(写真は欧州宇宙局(ESA)の報告より。右下から左上に向けて流れるのは、世界第5位の長流、エニセイ川。モンゴルに発し、シベリアを東と西に分け、えっちらおっちらと4023キロ、北極海に流れ込む。今年8月7日に撮影。)
シベリアの上空は何度も飛んだことがある。ウォッカを飲み過ぎて淀んだ目の下に白い凍った大地が延々と続いていた。ような気がする。それが夏の話なのか冬の話なのか,どちらにしても,ソ連崩壊のころの話なのであんまり定かじゃない。今と同じようにペルトを大音量で耳に叩き込み,そのダイナミックな悲哀に、目を潤ませて,あれやこれや,つまらないことを,さも大事なことのように考えていたに違いない。今と同じように。
そうやって、自分のようなどうでもいい人間たちが、大量に,たいした用事でもないのに,じゃかすかと温暖化ガスをまき散らしたおかげなのか,シベリアではこの40年間に気温が3度も上昇したそうだ。
エニセイ川の西には世界最大のピート(泥炭)の湿原があるそうだが、上記の欧州宇宙局の発表によれば,西シベリアの凍った湿原が融け出したそうだ。ここ1万1千年で初めてのことだ。
「凍った湿原には温室効果ガスであるメタンや二酸化炭素が何十億トンも封じ込められており、解凍による大気中への放出が心配されています。」
緑のシベリアの写真を見ると,じわじわと温暖化ガスが立ち上るのが見えるような気がしてきて、また,泣いてしまう。
人間の将来なんか、正直言って,どうでもかまわない。こんな糞のような人類なんか,どうなってもかまわない。でも,地球が痛んでいるのに悲しくなってしまう。借り受けた星を人間はこんなにしてしまった。地球がこうやって、あちこちで涙を流しているってのに,それを感じらることのできない人間の存在が悲しくてしかたがない。人類の将来なんかどうなろうが、知ったことじゃない。勝手にくたばりゃいい。
シャッフル・モードのスピーカーからペルトのFestina lenteが聞こえてくる。ゆっくり急げって意味の言葉だそうで,古代ローマ帝国のアウグストゥスのお気に入りな言葉だったそうだ。怠惰になりがちな自分を正当化するときにはとても都合のいい格言だ。ペルトの作品は同一の旋律を早く,普通、倍速という三つの速度で奏で合う。
ゆっくり,急げ。
自分はゆっくりすぎたのかもしれない。
急いでいなさすぎるのかもしれない。
知人の一人は最近,金輪際、飛行機に乗ることをやめると宣言した。
シベリアが解凍するのを目にして,自分も,もう,飛ぶのはやめようと思う。
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