Thursday, September 21, 2006

湯たんぽ/hotty hotty hotty, oi oi oi.

高原もだんだん暖かくなり、今日も町へ出かけた帰り,裏の小径でひなたぼっこしている蛇を危うく踏みつけるところでした。
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(写真:はい,笑ってちょうだい。ぱちり)

これまで毎日,しがみついていた薪ストーブからもだんだんに解放されつつあります。
今週は火を焚くのも夕方から夜にかけての数時間だけ,まったく使わない日もあります。

同じように冬の間、ずっとお世話になった湯たんぽともだんだん疎遠になりつつあります。湯たんぽというと、日本ではブリキ製が一般的ですが,こちらではゴム製ばかりで、店でも日本型のは見かけません。うちにはいくつか,日本で物珍しさに仕入れてきたのがありますが,普段使うのはゴム製です。

湯たんぽについては「四畳半の住人」さんがするどい考察をしており、下記のような利点をあげています。長くなりますが,引用させていただきます。(なお、湯たんぽについてだけでなく,「四畳半の住人」さんのサイトには快適な生活の神髄だらけ。是非、ご覧ください)

• ヒーターの類いと異なり皮膚が乾燥しない。
• 乾燥しないので、咽が乾かない。
• ほかほかと自然な暖かさがあります。
• 体全体(布団全体)が温かく、朝も快適に起きられます。
• 電気の消し忘れがないので寝坊した朝でも安心。
• 問題となっている電磁波が発生しない。
• だんだんと温度が下がるので、体に優しい。
• 電気代もかからずエコロジー。
阪神大震災でも大活躍→阪神大震災時の「湯たんぽ」、心尽くしの湯たんぽ
まいにち中学生ニュース 被災地へ湯たんぽ トルコや雲南を救済 〔現在リンク切れ)
• 一人分が安価なので、人数分揃えられる。
• 翌朝も気分の良い温かさが持続。
• 残り湯(まだ熱い)で顔や食器を洗える。
• 屋外でも簡単に使えて温かい(テント泊の方、お試しを)。
• 電源不要なので病院で入院中の人も使える。
(引用終わり)

欠点については「スイッチポンと使えないことでしょうか」とおっしゃっていますが、うちでは冬の間、薪ストーブの上でいつでもお湯が湧いているので,この点も申し分ありません。

シドニーに暮らしていたころは,さすがに亜熱帯な気候なので,湯たんぽを使うのは冬でも二、三度あったかな。だから、毎日のように,本格的に湯たんぽを使うようになったのは標高千メートルの山の上に越してからです。冬が寒くて長いこのあたり、冬の暖房をどうするか,それはほとんど死活に関わる問題です。

最近はうちの近辺でも簡単にスイッチを入れるだけのガス・ストーブや電気ストーブを使う人が多いようです。これらは確かに便利です。しかし、その便利さの裏側を考えると、簡単には使えません。

たかだか,部屋や寝床を暖めるだけだというのに膨大な量の燃料が使われ,巨大なシステムを使わなければならないと思うと,ほとんど気絶しそうです。タンカーでえっちらおっちら。パイプラインや電線もものすごい距離になります。こういう巨大システムはすべからく脆弱です。停電やガスの供給がストップしたときにはお手上げで,死活問題だというのに自分ではどうすることもできません。これが便利さの中身であり、その代償です。

そんなこんなで,うちの暖房の主力は近所で切り出した薪を燃やすストーブです。ひと冬,何のかんの、2トンから3トン近くの薪が必要になります。以前は,気の遠くなるようなところで切り出された薪を業者から購入していましたが,ここ何年かは自前でそろえられるようになりました。自分のような人間には、歩いていける距離にある近所の林に出かけて,薪を切り出し、それで暖をとる,その方が巨大なシステムに頼るよりずっと理解しやすいです。

でも、ストーブひとつだけでは家中を暖めることはできません。そこで湯たんぽが登場します。「四畳半の住人」さんは寝床を暖めるだけに使っているようですが,うちでは寒さ厳しい季節になると、昼間から湯たんぽの世話になります。薪ストーブのやかんに沸いた湯を湯たんぽに移し,相棒手作りのカバー(フェアアイル!)をかけ、仕事部屋に持ち込みます。これを膝の上におき,時々手を温めれば,寒さも苦になりません。
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(写真:編み物が得意な相棒は湯たんぽカバーもこんな具合にフェアアイル・スタイルで編み上げてしまいます。)

湯たんぽは水を保温媒体として使うわけで,パーマカルチャーをちょいとかじったりした人だと、薪ストーブにホットジャケットと呼ばれるパイプをくっつけ,水を暖め,それを各部屋には配管する,なんて仕組みを考えます。ストーブで暖められた温水が循環し,遠く離れた部屋も温まる。そういう仕組みを考えるでしょう。発展させれば,冬の間は風呂からシャワーから,一家の給湯もそれで賄ったりできます。もしかしたら発電源としても使えるかもしれません。薪ストーブはきわめてローカルなコジェネ施設にもなり得ます。こうしたスマートテクなやりかたは見栄えもいいし、いつか,お金がたっぷりあったり,必要な材料が格安に手に入るときには自分でも考慮したいオプションです。

でも、そこまでしなくても当分は湯たんぽで十分。これは適切な技術とか、身の丈にあった技術という考え方で,確かに少々手間がかかり,面倒かもしれないが,それでとりあえずのところ十分に機能する技術のことです。冬の間,ぬくぬく気分を快適に手にするのにハイテクもスマートテクもいらない。セーターをもう一枚,服を一枚重ね着し、湯たんぽが一丁あればいい。当然,寿命は来るでしょうが,面倒なメンテも必要なければ,重大な事故も起こりようがない。原発で発電し,その電気でストーブを使うことと比べてみてください。これ以上適度なレベルの技術はないのではないかと思います。

北半球はこれから寒くなる季節ですが,今年はぜひ,湯たんぽをお試しあれ。

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