世界最大の石油会社のエクソン・モービルが先日、ニューヨークタイムズの社説ページに広告を出した。
キャプションは「オイルピークですって?ご説にもかかわらず、石油生産に頭打ちの徴候はまったくありません」と読めますが、双眼鏡でなければ見えないとでもいうかのように、「頂き」はまだずっとはるか彼方、雲の向こうに隠れています。
エク
ソンの広告(pdf)より
キャプションは「オイルピークですって?ご説にもかかわらず、石油生産に頭打ちの徴候はまったくありません」と読めますが、双眼鏡でなければ見えないとでもいうかのように、「頂き」はまだずっとはるか彼方、雲の向こうに隠れています。
エク
ソンの広告(pdf)より
これをエクソン自身の「2005年版エネルギー見通し報告」のなかの2030年まで石油生産見通しのグラフと比べてみました。
グラフ
2005年版エネルギー見通し報告(2005 Energy Outlook Report)より
これを見るとエクソンがどれほど中東の埋蔵量をあてにしているか、よくわかる。エクソン社の予測ではOPEC非加盟産油国の生産が2010年頃ピークに達し、それから減少し始めると描かれている。しかし、OPECとなると話は別で、まるでそれが当たり前のような勢いで生産量は上昇していきます。現在、およそ日産3千万バレル(30MBD)が2030 年には47MBDになると見積もられている。
先日紹介したスタニフォードなども言及しているが、「ピーク否定者」があてにするのは中東の石油。ここに世界の石油埋蔵量の2/3が眠ると言われているからだ。
しかし、それは本当にあるのか。
中東各国が自己申告する埋蔵量をここまで楽観的にあてにできるのか、エクソンは説明しません。これについては、埋蔵量を大袈裟に見積もることで利益のあること、そして、事実、たいした油田の発見が報告されないのに埋蔵量の申告だけが軒並み増加したこと、それを示す内部資料がクエートから出ていること、など、これまでにもお伝えした通りです。
不思議なことに、非加盟産油国には「頂き」が迫りつつあることをエクソンは認めながら、同じことがOPEC諸国にはあてはまらないようです。
ロバート・ハーシュはオイル・ピーク問題の影響を緩和するためのレポートで、ピークの影響を抑えるためには「ピークに達する20年前以上から」それに備えて手をうたなければならないと言いました。問題の所在を認めず、何も手をうたなかったらそれこそひどいことになると警告しています。
エクソン社などの石油会社はオイル・ピークでもなんでも、原油の値段が高騰すればぼろ儲けになるわけで、何を言っても構わないのかも知れませんが、この広告を真に受けて、ピーク楽観を決め込んだりしたら、そのつけは払うことを覚悟しておかなければなりません。
初めの一歩は、自分の暮しが石油漬けであることを認め、石油が有限であることを認め、ふたつをあわせると石油漬けの暮しは早晩立ち行かなくなると認めることです。
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