気候変動について協議するかのように喧伝された「亜太パートナーシップ(APP)」だが、結局は原発推進体制であることは以前、指摘した。
「クリーンで効率的な技術」ってのは原発のことで、原発先進国のアメリカ、日本や韓国、それにウラン資源を売りたいオーストラリアが中国やインドへ原発の開発を迫る、どうやら、それがAPPの構造のようだ」
そして、そのAPP構想が着々と現実化されつつある。皮肉なことに原発をクリーンなエネルギーと世界中を言い包め、原発産業の後押しをするアメリカとオーストラリアはともに京都議定書調印を拒否する環境汚染大国だ。
3月初め、ブッシュ大統領はインドを訪問し、F16やF18の売却だけでなく、技術や燃料の移転に関する原子力協力に合意した。インドには現在15基の原発があり、3,310メガワット(MW)を発電しているが、3年以内にはさらに7基(3,420MW)が完成の予定だ。インドは国内にウラン鉱床はあるものの、量は微々たるもので、それらの原発の燃料確保が急務になる。
ブッシュ大統領のあとを追うようにインドを公式訪問したのは「ブッシュの代官」を気取るハワード首相だ。出発するまではマスコミの質問に、「アメリカが認めたからといって、核拡散防止条約締結国以外ヘのウラン供給はしないというこれまでの方針を変えるつもりはない」と言っていたにもかかわらず、到着するや、掌を返して前言撤回。「インドが、それなりの国際査察を受けれることが前提だが、輸出は検討する」。
3月21日付けのアルジャジーラの報道によれば、ハワード首相はサイクロン・ラリーの見舞いに電話をかけてきたブッシュ大統領と
インドへのウラン販売について協議し、御墨付きをもらったということだ。どちらが言い出しっぺなのかは分からないが、これで核拡散防止条約(NPT)非加盟の核兵器国、インドへのウラン輸出は決まったようだ。たぶん、同じ電話で、もう一方の中国へのウラン輸出についてもブッシュ大統領は了解を求められたに違いない。
オーストラリアは2004年8月から中国へのウラン輸出協議を続けてきた。すでに細部まで交渉が終わり、4月上旬に温家宝首相が訪豪にあわせた発表を待つばかりだ。合意はウランの輸出だけでなく、中国にウラン採掘への参加を認める内容も含まれる予定で、中国マネーがウラン採掘に流れ込むことだろう。
原発推進には地球温暖化や気候変動対策が口実として使われているが3月3日付けのcountercurrents.orgが指摘するように、アメリカやオーストラリアがこれほど熱心なのは、中国やインドを化石燃料獲得競争から押し退けるのが本当の目的ではないだろうか。ブッシュ大統領はニュー・デリーで次のように発言をしている。
「インドの原発が世界の化石燃料需要を抑えることは、私たちの経済的な利益なのです。化石燃料への需要を押さえること、それはアメリカの消費者の利益につながります」
オーストラリアはアメリカのエネルギー戦略の一翼を担い、核拡散に大きく手を染めようとしている。
(とはいうものの、ウランなどの鉱産資源開発は連邦政府ではなく、州政府の管轄。なので、ハワード政権の一存だけでは進まない。現在、州政府はすべて労働党が政権にあるが、ウラン開発政策にはそれぞれの州で違いがある。世界最大のウラン鉱床、ロクスビー・ダウンズのある南オーストラリア州政府のラン首相は連邦政府の積極的な核燃料輸出を支持している。しかし、ウラン資源の豊富な西オーストラリア州やクイーンズランド州は採掘を州法で禁止している。これらの「反核」政策をとる州に連邦政府やウラン業界からの圧力がさらに強まりそうだ。)
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