Sunday, December 11, 2005

古タイヤで家をたてる、その2。A tyred old house #2.

信州安曇野、臼井さんという粋人の経営するシャロム・ヒュッテという粋な宿で働くゴカちゃんがオーストラリアくんだりまで休暇に来たんで、えっさほいさ、一緒にテントと寝袋を担いで、近所で古タイヤで家を建てている人のうちへ3日ほど手伝いに行った。

鳥がピーチクパーチクあちこちからさえずり出すのとともに起きだし、昼ごろまで作業をする。日中は暑いので昼御飯のあと、シエスタ。夕方になって、またもぞもぞ起きだし、えいやっさ、日の傾きかけるころまで、もうひと作業。それから、ひとシャワー浴びて、近くのパブに出かけ、沈む夕日を眺めながら冷たいビールを飲む。これがうまい。ので、もう一杯。んで、もう一杯。あとはキャンプに戻って、ばたんきゅう。夜中に時々目をさますと、近くの小川から蛙のかけあう声が聞こえてきたり、それはそれは、な生活でした。

日の出とともに起き、日の入りとともに眠る、なんてかなり理想的なキャンプ生活で、しかも、汗をかいたあとのビールは本当に格別。ビールのおいしさのためだけに汗を流すこともまったくいとわない自分に気付いたりします。はあ。

実際の作業工程はいたって簡単。こつを飲み込めば、自分のような家作りどころか大工仕事にもまったくしろうとな人間にも、家の壁くらい、簡単にできてしまいそう。

まずはミキサーに粘土質の土を投げ込み、水で混ぜ、泥(セメント5%)をこねます。


ミキサーで泥をこねるゴカちゃん。

んで、こねた泥を一輪車にあけて、運び、それをタイヤに詰めていく。それだけ。タイヤに泥が詰まったら、また、その上にタイヤをのっけていく。タイヤはこちらで一番普通に手に入る直径65センチのもの。ということは壁も65センチの厚さになる。これは、結構な厚さ。こちらの日干しレンガの標準が25センチから30センチだから、2倍以上の厚さ。断熱効果は抜群でしょう。

タイヤ工法の利点はいくつか、この前も書いたけど、泥を詰めていく時、あんまり水平とか垂直、そういうことを気にしないでいいということ。日干しレンガだとか、ストローベール工法だと積んでいく時、ちゃんと水平を出さなけりゃならないし、ラムドアース工法でも枠を移動する時、かなり神経質になっちゃう。それがタイヤ工法だと、かなりアバウト。あとで、調節できるから、なんて調子でかなりいい加減に積み上げ、泥を詰めていく。



タイヤに泥を詰めていくデビッド。

と、まあ、工程自体は単純。ただ、特に日本でセルフビルドを推賞する連中が言うような「楽しさ」だけじゃないことは確か。それなりに汗を流す覚悟がいる。からだがあまり丈夫でない人、丈夫でも汗を流す覚悟のない人にはとても薦めません。作業後に冷たいビールを飲むためだけに汗を流すことをいとわない、自分のような人間にはできるんじゃないかと思いますが。

でも、自分がタイヤで家を作るとしたら、もっと算段を考えると思う。だって、2人、3人と手があった方が確実に楽。実際にデビッドがひとりでやっている時は、4つか5つ分の泥をこね、タイヤに詰め込むだけで疲れてしまうそうですが、ゴカちゃんと自分が手伝うだけで、1日30個は楽勝。だから、自分でやるとしたら、近所の人や知り合いの力を「結」だとかなんとか、うまいこと言い包めて借りてくるか、もしくはウーフなど、ただ同然で手伝ってくれる人を泊める施設を作ってから取りかかるのがベストではないかと思います。間違っても自分でひとりでは決して取りかかるものじゃない。どんなに作業後のビールの味が格別でも、とてもじゃない、大変すぎます。

デビッドが建ててる家はほぼ、10メートルから20メートル、200平方メートルの家で、壁の高さが2メートル40センチ。これだけの壁を作るのに、600から700のタイヤが必要になるそうです。ということは、まあ、雨の日とか、休みとかを勘定に入れても、2、3人でやれば、壁は2、3ヶ月でできてしまう。

あくまでも壁をちょこっと作っただけの経験で、基礎とか屋根とか、まあ、その他難しいことがいろいろあるはずですが、とりあえず、家作りなんて、それほど大袈裟なことじゃない。誰だってやる気になりゃできる。そう言ってしまいましょう。しかも安上がり。デビッドの家は、基礎や水まわり、電気工事などをプロに任せたり、屋根や窓を特注にするつもりだそうですが、それでも6万ドルくらいであがるんじゃないかとのこと。もっと安い材料を使えば、3万ドルくらいですむかもしれない。日本円にすれば300万円足らず。それで家が立つ。しかも、埋め立てに回される廃材利用だから、環境にもいいことをした気分になる。
人間の住まいなんか、やろうと思えば、そのくらいでできてしまうものなのだなあと気付いたことは大きな収穫。なのではないでしょうか。はい。

ゴカちゃん、ごくろうさま。
(11/12/5)

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