国連の安全保障理事会は7月31日、ウラン濃縮関連活動の全面停止を求め、8月31日までに従わない場合には経済制裁を発動することをイランに警告する決議を採択しました。
経済制裁が発動されれば、イランは石油の輸出もできなくなり、たしかに、イランにとっても打撃になるでしょうが,この決議に賛成した石油消費国の方への影響はどうなのでしょうか。そのあたり、あまり報道されていません。
たしかに、毎日毎日,世界中で消費される8100万バレルのうち、イラン産のアブラは200万バレル、量的にはそれほど大きくありません。アメリカには7億バレル近い備蓄があり,日本やヨーロッパにも1億バレル以上の備蓄があるので,イランへの経済制裁がアブラの供給を直接、脅かすことはないだろうと見られています。為政者や巷のメディアがあまり話題にしないのも、これを頼りにしているからでしょう。
しかし、オイルピークに直面する現代,ことはそれほど簡単ではありません。
元国営イラン石油会社副社長でありイラン史講師(テヘラン大学)のアリ・サムサム・バクティアリは、7月11日、オーストラリア国会の上院調査会に招かれ証言したなかで、この時代に「地政学的な事件」がもたらす影響を次のように述べています。(全文は国会議事録)
「ペルシャ湾であれ,東南アジアであれ,地政学的な事件がもたらす心理的なインパクトが石油価格に大きく跳ね返ります。オイル・ピーク直後の時代,需要と供給の差は拮抗しており,地政学上のちょっとした事件でも大きな影響になります。
たとえば、サウジアラビアでもどこでもかまいませんが,かつてのように、200万から300万バレルの石油を増産できる余剰能力があれば、事件にもおろおろすることはないでしょう。しかし、余剰能力はもうどこにもないのです。サウジは100万から150万を増産できる余剰能力があると言っていますが,私は信じません。サウジには余剰能力は全くありません。それどころか,余剰能力は,OPECにも非OPEC諸国,ロシアにもサウジにも全くないと思います。大きなインパクトになり,石油価格がどこまであがるのか,わかりません」
アブラがふんだんにあっても,小さなことで価格が不安定になることはピークの兆候として,ピーク論者がずっと指摘していることです。アブラの需要と供給が逼迫し,余剰生産能力がどこにもないこの時代には「これまでどおりが通用しない(バクティアリ)」ことを肝に銘じておかなければならないでしょう。
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