卯年が明けて、今年もよろしく。今年もいろいろあれこれ考えていこうと思ってますのでおつきあいください。
さて、正月になるとメディアには今年の予測が並びます。景気はどうなるのか、政治はどうなるのか。これからの12ヶ月はどんなことになるのか、そういった予想やら予測、観測がメディアに並びます。たいていの場合はワイドショー的であり、箸にも棒にもかからない憶測であり、表層をなでるばかりです。経済を牛耳るエネルギーがどうなるだとか、人間の生存に欠かせない食料はどうなっていくのか。人間が知らなけりゃならないことはほとんど語られません(例外は英フィナンシャル・タイムズで、「勢いを増すコモディティー高騰穀物、鉄鉱石、石油の高騰で景気回復の腰折れも」という記事を12日31日付けで載せています。日本語版はこちら)。
ここ何日かの報道を見るだけでも、今年が2008年の再来になってもおかしくない状況にあることがわかります。
国連食糧農業機関(FAO)が5日発表した最新データによると、2010年12月の食料価格指数は6カ月連続で上昇し、2008年6月の史上最高の213.5を上回る214.7に達したそうです(02~04年を100)。中国などの新興国における食料消費の拡大、そしてロシアの大旱魃、オーストラリアの大洪水など、気候変動の生産への影響が考えられます。しかし、特に価格が大きく跳ね上がっているのは砂糖、トウモロコシ、ナタネ、大豆など’の油料種子、パームオイルなどの食用油です。ここでたびたび指摘してきたように、これら、食用にできる作物(砂糖、菜種、大豆、パームオイル)がアブラの代用として人造石油の生産に使われるようになってきたことも価格を押し上げる要因であることは間違いないでしょう。
FAOの報告で見る限り、とりあえず、今のところ米や小麦などの穀類(2008年6月の最高時に比べ13%低い)、乳製品、肉などの値段はそれほど上昇していません。それが2008年のような食料暴動がまだ起きていない理由です。しかし、この報告を取り上げたブルームバーグの記事の中で、FAO の上級エコノミスト、アブドルレザ・アバシアンは次のように警告しています。
「残念ながら、多くの不透明材料を背景に、穀物価格が上昇する可能性はまだある。南米での収穫で想定外の事態が起きた場合、穀物価格が値上がりする余地は相当ある」
穀物価格があがれば、飼料価格に跳ね返り、乳製品や食肉価格も上昇をまぬがれないでしょう。
エネルギーの数字も2008年の再来があってもおかしくないことを示唆しています。アブラ(すべての液体燃料)の生産/需要は以前も報告した通り、史上最高に達しています。価格の方は1バレル90ドルをうかがう状態が続いています。
IEAの主任エコノミストのファティ・ビロールは1月5日、BBCで放送されたインタビューでアブラの価格は「危険地帯」にはいりつつある。回復の兆しのある経済は原油価格が上昇すれば、ぽきんと腰折れになるだろうと警告しています。
「2008年の高価格は、その後の金融危機を引き起こす主要因ではなかったかもしれないが、貿易収支を悪化させ、ビジネスや家庭の収支を悪化させ、体質を弱め、そこにいたるまで、大きな役割を果たしたことは事実だ。忘れてはならないことは、2008年には$147を記録したが、それは瞬間風速であり、通年平均価格は$90だったということだ。今日、原油価格はそのレベルで推移しており、通年の平均価格ということで見ると、2008年という壊滅的な状況とそう違わないということだ」
前述のフィナンシャルタイムズの記事にはソシエテ・ジェネラルのエコノミスト、ベロニク・リッシュ・フローレスが引用されています。
「既に長期的な平均値の2倍 に達している(原油の)実質価格は、危険なほど過去の痛覚域に迫っている」
TPPについてもまるで真空状態にいるかのような認識に基づく議論が日本のマスコミを賑わしています。もちろん、2008年が再来するとは限りません。しかし、同じように食料価格が高騰し、原油価格が高騰しても机上の空論を続けていて、大丈夫なんでしょうか。状況は2008年以上にひどくなるかもしれません。
国の舵取りや、会社の経営、地域社会の運営、自分の将来設計には、まず、自分の生存が何に依っているのか理解し、何が必要なのかを考え、それらを取り巻く世界の現状を把握することが欠かせないでしょう。そして、行動は自分の足下から起こすのがベストでしょう。
食料危機については下記などを参照ください。
日本の食糧事情/the end of cheap food.
ご飯、それともクルマ?/Think global, eat local.
食料ピーク2/peak food too.
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