Monday, June 09, 2008

地域社会の再ローカル化/Relocalise now.

原油価格高騰や食料価格の高騰など、エネルギー下降時代が本格的に幕を開けたようです。それにつれ、これまでほおかむりを決め込んできた主流メディアでもオイル・ピークを取り上げることが多くなってきました。

現在世界中では一日約8千5百万バレルのアブラが消費されていますが、早くからピークに警鐘を鳴らしてきたアイルランドの地質学者、コリン・キャンベルによれば、この量は220億人の奴隷が朝から晩まで,24時間,ぶっ通しで働く量に匹敵するそうです。ものすごい量ですが,これからスピードをぐんぐんと増していくピーク以降の下り坂では,これらの奴隷の数ががどんどん減っていくことになります。クルマでどこかへ出かけるときや、地球の裏側から届けられた食料を口にするときは、何人もの奴隷の顔を思い描くよう心がけています。

アブラというヤク漬けの生活からアブラを抜いていく作業は、時に大きな苦痛を伴います。一気にがくんと飛び降りようとすれば,肉体的にも精神的にも怪我をしかねません。奴隷を幾人ずつでも,自ら進んで解放していくのか,それとも、もう奴隷は使えないってお上が「奴隷解放宣言」するのを待つのか。はっきりしていることは,これだけの奴隷を肩代わりすべはない、代替えを探そうとすれば,そのしわ寄せが玉突き連鎖で押し寄せるということです。

うちではゆっくり急ぎながら,奴隷を一人ずつ解放する作業に取り組んでいます。

食料生産でもそうですが、自分や家庭でできることには限りがあります。今年の夏は気候に恵まれ,なんとか8割ぐらい、自分の口にする食物を自宅でまかなえましたが,すべてをまかなうなんて,考えただけでくらくらしてきます。運輸/交通でも10キロくらいの範囲なら徒歩や自転車を利用できますが、それ以上になるとバスや鉄道など公共交通の助けが必要になります。他人をまず、当てにするのではなく,自分の生活からアブラを抜いていく。一人一人、個々の家庭が奴隷解放に創造的に取り組んでいく。それが基本ですが、自宅を要塞化するのではなく、近隣社会や国全体の脱アブラ化を働きかけていくことも大事です。

とはいうものの、人口わずか300人の村で何ができるのか。

10ヶ月ほど前に引っ越してきてみると,村にはエネルギー問題に関心を持つ人の集まりがありました。一国のエネルギー/気候変動担当大臣を村の公民館に呼んで話をさせてしまうような団体です。右も左もわからないのに,到着早々その活動に混ぜてもらい,専門家を招いた講演会や映画の上映など啓蒙活動をする一方,安いアブラに頼るグローバル化でつながりの薄れた地域社会を再活性化する作業に参加しています。

マーケットの開催に協力したり,食品の共同購入グループを始めたり,したりして、現在は糞もみそも一緒くたにゴミ捨て場に送られている村のゴミ/資源回収問題にもピーク/環境ゲテモノ化の観点から積極的に取り組んでいます。




先週は国のあちこち、11カ所で「世界環境の日」のイベントが開催されましたが,わが村でも公民館でエネルギーエキスポを開催しました。




あちこちの新聞で事前に宣伝されたせいか、80キロ離れた人口15万の都市などからもたくさんの人が訪れ、小さな村のイベントとしては画期的とも思える800人近い参加者で一日中にぎわいました。
オタゴ・デイリー・タイムズより)






ソーラー発電、雨水タンク,風力発電、ソーラー温水など、企業が最新の商品を並べる横で,昔ながらの足踏みミシンやら手動のサイダー・プレスなど温故知新技術が展示されました。ピーク以降の時代/環境ゲテモノ化時代のこのごろ、脚力を利用する自転車は輸送/交通手段の花形ですが、当日も3、4人の銀輪有志が遠路はるばる30キロ離れた人口1万2千の町からやってきて、3輪や廃物利用のリカンベント、電動アシストなどの試乗が人気を集めました。自分もいくつか乗ってみましたが、今利用している自転車がお釈迦になったら、ぜひリカンベントを手に入れたいなあ。





以前,ここでも振れましたが、現在電力などに動力を依存する器具を一つ一つ、人力(や動物力)で作動するものに変えていく,壊れてもすぐに自宅や近所で修理ができるものに変えていく,そういう適切技術に切り替えていくことが急務で、うちからは脚力利用の粉挽き機と太陽を利用した果物乾燥機を出展しました。

粉挽き機はエクササイズ・バイクに市販のミルをつけたもので,小麦などを挽くことができます。それまで腕力では2斤分の小麦粉を得るために1時間ほど汗だくになっていましたが、脚力利用だと20分ほど。ほとんど汗もかきません。小麦粉は挽きたての方が味も栄養価も高いようです。

パンはどこかで誰かが育てた小麦をどこかの誰かが粉に挽き,どこかの誰かが焼いたものを店で買う、それが当たり前だと思った頃から比べると,はるかに自分の食に関わるようになりましたが,来シーズンは小麦を育ててみたいなあ。泥を練ってオーヴンも作りたい。どんどん,楽しみが広がっていきます。

このエクスポ以外にも村の小学校の庭にリンゴの植樹をしたり,金曜の夜には近所の産品を原料とした晩餐会も開かれ60人ほどが集まりました。

まだまだ途についたばかりで、しかもみんながみんなというわけでは決してありませんが,うちの村ではピーク以降の時代をしっかりと認識し,対応を始めています。地域の絆がぐんぐんと強まっています。これからの時代に備え,あなたの町や村,市の再ローカル化はすすんでいますか?

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