Wednesday, June 18, 2008

日本の食糧事情/the end of cheap food.

世界各地で食品の高騰が続き,暴動や死傷事件に発展しています。国内農業を犠牲にしてもグローバル化を推進しようともくろむ人たちの当てにするチープブードは、もうどこにもないことがますますはっきりしてきました。

問題が世界的なものでもあるにも関わらず,国内には「日本人は米を食べれば食料危機は解決する」なんてちんぷんかんなことを言う人もいます。確かに戦後日本人の食生活は変わり,米あまりの状態が続いてきたことは事実です。そして食のローカル化という観点からも、輸入される食糧に頼らず,国内の気候に適した作物を主体とした食生活に切り替えることに超したことはありません。

しかし,現在,米が余っているからと言っても国内に国民を養えるだけの米が作れるとは限りません。現在世界を襲う食料危機の元凶はオイル・ピークにあります。安いアブラに頼ってきた社会,産業社会は根本からその存在を揺すぶられているのです。食糧は安いアブラがあったからで、それが手に入らなくなるとき、当然高騰します。

近代的な食糧生産はトラクターなどの農機、輸送だけでなく、水田から水路にいたる「農地改良」、「農道」の整備、農薬、除草剤など,いたるところに大量のアブラが投入されています。現代日本の米作りは篠原信が指摘するように石油を食料に変えてきただけで,アブラが抜けていく時代,生産レベルを維持することは到底できません。 篠原は「1キロカロリーのお米を作るのに石油を2.6キロカロリー使う」と試算し、石油に頼らなければ日本の食糧生産能力は3000万人を養うのがやっとだと結論しています。

もちろんピーク以降も、これまで使ったのと同量のアブラが残っており,すぐに石油抜きになるわけではありません。したがって,今すぐに「食料危機」になるということではありません。しかし、現在の食糧供給体系は驚くほど脆弱であることは記憶しておいたほうがいいでしょう。在庫をを極端に削り、安いアブラをふんだんに利用する配達網に頼る「カンバン方式」を食糧供給にも導入したおかげで、経済効率は上がり、食糧価格は下がったかもしれませんが,現在の食糧供給体系はちょっとのことで簡単に崩壊しかねません。

日本よりも食糧自給率が高い英国でも、ブレア政権の田園庁長官をつとめたキャメロン卿が「無秩序まで9食」しか離れていないと警告しました。つまり,ガソリン供給が途絶えるなどして食糧供給体系が止まってしまえば,わずか3日で法も秩序も保てなくなるということです。さてはて,日本は3日持つでしょうか。

無秩序状態に陥るのを避けるにはどうしたらいいのでしょうか。

個人では3日くらい店に行かなくても食べていけるように備蓄を心がけることです。そして9食を10食、11食とのばしていく。食糧の備蓄は乾物だけでなく,菜園や果樹などの生産基盤も含まれます。手近な場所でみずから食糧を生産していくことです。少しずつでもこれを増やしていけば心理的にもかなり楽になります。他人や他の場所,他の国に食糧をなるべく頼らないように、一人ひとりが自覚し,自らの食の生産に関わり、自給率を底上げしていくことで、無秩序に陥る危険はどんどん少なくなります。そして,共同菜園や食糧の交換などを通し,隣近所に強い絆を普段から作っておけば,万一食糧危機になっても無法状態にはならないでしょう。また、生産を手伝うなどして、プロの百姓とも絆を作っていく。ピーク以降のエネルギー下降時代に、アブラをじゃぶじゃぶと水田に注ぎ込むような食料生産はできなくなるので,それに備えた人間関係を作っていくことです。

さらに政府には,チープブードを海外から求め、国内農業を切り捨てるような食のグローバル化戦略を今すぐ取りやめることを要求する。農水省には南氷洋の「調査」捕鯨などに税金を無駄に使うのをやめ、国民が食のローカル化に取り組むのを助けるためカネや資源を投入するよう要求する。何しろ,国民の食がかかっているんですから。グローバル化した食糧供給の見直し、食のローカル化はすべての国民が今すぐ取り組まなければならない焦眉の課題です。

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