(18日、ピークについて記者会見するクラーク首相。http://www.scoop.co.nz/stories/HL0604/S00206.htm
より)
石油価格が高騰すると、どこの国でもマスコミは経済学者や「アナリスト」を引っぱりだし、またぞろ、お決まりの理由をあれやこれや垂れ流します。やれ、ナイジェリアの情勢不安であり、イランの「大量破壊兵器」であり(あれ、イラクだったっけ?)、そうでもなければ、ハリケーンです。
政治家も役所も、IEAなどの楽観的な予測にしがみつき、価格の高騰が一時的なものであるかのように言い繕い、国民の不安を鎮静しようとします。これまた、いつも通りのこと。
なんて思いながら、憧れの国、ニュー・ジーランドのニュースをチェックしていると。
なんと、クラーク首相、やってくれましたね。ガソリン価格の高騰の理由は「すでに生産ピークに達するか、それとも、かなり近いところにいるからだ」とはっきり発言しています。一国の首相がピークを口にするのは世界でも初めてのことではないかしら。クラーク首相の発言は歴史的です。
問題の発言があったのは18日の記者会見。この会見で、クラーク首相は、アメリカやヨーロッパが支援を凍結するなか、ニュー・ジーランド政府はパレスチナ自治政府への援助をこれまで通り続けることを発言し、確固たる姿勢を見せました。そちらのほうは、かなり大きく報道されましたが、同じ会見でのピークを認める発言は、メディアが鈍感なのか、それとも報道したくない理由があるのか、まともに報道されていません。
「すでに生産ピークに達するか、それとも、かなり近いところにいる」とクラーク首相が認めた影響は広範です。ピークを知りながら、何も策を講じなければ責任問題、職務怠慢に問われます。そして、緩和策をとることは経済の失速をともなう危険があります。
たとえば、現在建設中の道路はどうするのか。すぐに不要になる道路建設ではなく、これからの時代に必要になるものへ予算を振り向けるのが賢明ですが、いったん予算がついて動き出しているプロジェクトを見直すのは容易ではありません。しかし、クラーク首相が「ピーク問題」を正確に把握しているとすれば、ニュー・ジーランドではこれから、公共政策の大掛かりな見直し、転換が行われるでしょう。
経済ヘの影響も深刻です。経済「成長」にはエネルギーの消費が不可欠だからです。手に入るエネルギーの量が減退していく時代、右肩下がりの時代に、これまでのような経済「成長」はありえません。しかし、クラーク首相は「成長」の神話に慣れきった国民を納得させることができるのか。「これまでのような暮しはもうできない」なんてことは、たとえ真実であっても、耳障りのいいことではありません。
各国政府が「ピーク」を認めたがらないのは、このような理由があるからです。各国政府はクラーク首相の勇気ある発言に倣い、手遅れになる前に、ピーク以降の社会構築に踏み出すべきです。
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