Saturday, July 05, 2008

庭を食え/eat the view!

米大統領選挙が近づき、ウエッブ上では就任初日、次期大統領に何をしてほしいか、まず何に取り組んでほしいのか,投票が行われています。イラクからの撤退や温暖化への取り組みなどが上位にくるかなと思ったら,現在一番人気は「ホワイトハウスの芝生を食べられる庭に変えろ」という提案です。



(eat the view!より)

食糧生産は農民と呼ばれる限られた数の人間に任せ,残りの大多数の人間は消費者と呼ばれ商業や工業,サービス業に従事する。そういう構造が近代型社会でした。身の回りを眺めれば、どこの誰が作ったのか、どこからどういう経緯でたどり着いたものやら,皆目見当のつきかねる食べ物だらけです。安いから,手軽だからという理由だけでそういう構造をほったらかしにしたまま、安全を求めても無理というものです。鳥フルや狂牛病,偽装にまがい物、生産者と消費者の距離が伸び,忍び込む余地があるところへは何でも忍び込みます。しかも,そういう構造が可能なのは安いアブラがふんだんにあったからで,これからのアブラ減耗の時代にはとてもかなわなくなります。

オイルピークの核心は食糧問題である、それに気づいた人たちが世界各地で,観賞用の景観を食糧生産の場に変える運動に取り組んでいます。食糧生産,食糧供給を他人まかせにせず,自発的に自らの手に取り戻そうともがいています。

北海道に集まる先進国リーダーたちが食糧問題に本気で取り組むならば,まず,自分たちが生産者になる,ホワイトハウスや永田町の芝生や植え込みを菜園に変えるくらいの覚悟を見せてほしいものです。

でも,指導者にはあんまり期待できないかもしれません。指導者やお上によるトップダウンの変革を呼びかけつつ,底辺から草の根行動を起こしてしまうゲリラ活動も必要です。あなたの庭,あなたの町でも街路樹を果物やナッツの木に変えたり,公園の芝生を食べられる景観に変えることに取り組んでみませんか。減耗時代への備えは早めに取り組めば取り組むほど,楽になりますよ。

Friday, July 04, 2008

リン酸ピーク/peak phosphorus.

北海道で開かれる先進国サミットで食糧問題が主要議題として取り上げられるそうです。具体的にどんなことが討議されるのか知りませんが,昨今の食糧危機の原因は安いアブラに頼る近代的な(大規模/単一作物/集約型)食物生産の行き詰まりによるものであり,それを根本から解体し、小規模で多品種な食糧生産体系を作り出さない限り,どんな策も付け焼き刃になるでしょう。



(世界の人口とアブラ生産変遷/エネルギー・ブレティンより)
もうひとつ、食糧問題を取り上げるなら避けて通れない問題があります。原油ほど華々しく注目されませんが、リン鉱石の値段は今年始めに1トン200ドルと,昨年比4倍に値上がりしています。食糧生産への影響は原油より直接的です。仮にアブラのピークが何かの理由でこなかったり、何か魔法の力で克服できたにしても、近代的な食糧生産は大きな問題を抱えています。



(世界人口とリン鉱石生産/エネルギー・ブレティンより)
英タイムス紙は6月23日付けでリン鉱石のピークについて取り上げています。その記事は、オーストラリア人研究者,ダナ・コーデルのリン鉱石はここ30年くらいの間にピークを迎えるかもしれないという研究を紹介しています。オーストラリアでは3月にジ・オーストラリアン紙で報道され,つい先日,オーストラリアABCラジオでも報道されています。

しかし、リン鉱石はすでにピークを過ぎてしまったという研究もあります。アメリカの原油ピークを1956年に予言したマリオン・キング・ハバートの理論に基づく線形化を適用すると、リン鉱石は既に1989年にピークを過ぎてしまったとパトリック・デリーとバート・アンダーソンは報告しています。





(リン鉱石の世界生産/エネルギー・ブレティンより)

農業や庭いじり,植物の生育に関わる人ならご存知のように,植物の生育には窒素やカリとともにリン酸が欠かせません。植物全体の生長、特に葉の生長に欠かせない窒素は、アカシアや豆科の植物のように、空気から窒素を取り込み地中に固定する能力を持つ細菌を根に寄生させる植物を育てれば、手に入れることができます。しかし、リン酸は土や水の中に限られた量しか存在しません。近代的工業的な食糧生産はリン酸をリン鉱石に頼ってきました。これがピークを迎え、減耗していけば化学肥料に頼る農業は行き詰まってしまいます。アブラの代替えとしてバイオ燃料用植物の生産もとてもおぼつきません。

そして、リン鉱石のピークが近代的農業に与える影響は化学肥料だけにとどまりません。リン鉱石は化学肥料とともに近代型農業の双璧をなす除草剤、ラウンドアップなどの原料でもあり、原料の値段が高騰するにつれ,ラウンドアップの値段も急騰しています。

食糧不足の解決策、バイオ燃料生産の切り札として遺伝子組み換え作物の導入を叫ぶ声もあります。しかし、モンサント社などが導入に熱心な遺伝子組み換え作物の栽培にはリン鉱石を原料とする除草剤の使用がセットで組み込まれており,それなしでは機能しません。リン鉱石がピークに達し減耗していく時代に遺伝子組み換え作物はどうやって生育できるのか、問わずにはいられません。

しかし、アブラのピークには切り札はありませんが,肥料としてのリン酸には幸いなことに代わりがあります。しかも,それは、つい何十年前まで日本のどこでも普通に広く行われていた農法です。

20世紀初頭に日本や朝鮮、中国を旅したアメリカの土壌学者,FHキング博士はその著書で東洋に連綿と伝わる農法を絶賛し、その頃アメリカを席巻しつつあった化学肥料をばんばん使う近代型農法との対比で、「四千年も続いた農法」を恒久的な農法(パーマネント・アグリカルチャー)と呼びました。もちろん、キングの著書「東亜四千年の農民(杉本俊朗訳,栗田書店)」はパーマカルチャーの種本のひとつです(もうひとつ、パーマネント・アグリカルチャーを副題とする本には、単年作物ではなく多年生作物を食糧源として見直すことを説くラッセル・スミスの「トゥリー・クロップス(1929年)」がある)。

キングが「永続する農法」と呼んで絶賛したのはまさにリン酸を回収し生産に再利用する農法です。それは人糞を肥料として食糧生産に利用することです。すでに前述のコーデルの提言をうけ、スゥエーデンでは人間の尿からリン酸を回収するために,公衆便所の改装が始まったそうです。うちでは貴重な肥料を無駄に水に流していますが,移住2年目のこれから、なんとか回収策を講ずるつもりでいます。

人糞を肥料にすることだけで食糧危機が解決するはずはありませんが,キング博士を経由しパーマカルチャーを生み出す源流のひとつとなったアジアの「恒久的な農法」はサミットで討論に値する策のひとつであることは間違いありません。

Thursday, July 03, 2008

IEA見通しと日本のマスコミ/Too knackered.

7月になり国際エネルギー機関(IEA)は原油需給の中期見通しを発表しました。
日本のメディアでもあちこちで報道されています。
どれも原油の需給逼迫が続くこと,これからも原油高が続くという趣旨を伝えています。これらの報道はどれも間違いではありませんが今回の見通しで一番重要な部分が欠落しています。

2007年以来,中期見通しはOPEC、非OPEC諸国の生産に関しかなり大規模な下方修正をしてきた。これらの見直しが必要になったのは,平均12カ月と推定されるプロジェクトの遅れ、そして世界全体で平均5.2%の減耗(昨年の4%から上昇)のおかげである。 世界の安定生産を保つためには毎年、日産3.5百万バレルの新しい生産が必要になる。

IEAのプレスリリースより。

昨年の予想では4%だった減耗率を今年の発表では5.2%に修正しています。これは日本のような消費国のメディアにとってはとても大きなニュースなはずです。この率はリチャード・ハインバーグなど、ピークに早くから警鐘を鳴らしてきた人たちの提唱する「オイルピーク議定書」の予想する減耗率をはるかに上回ります。こんな率が14年も続けば生産量は現在の半分に減ってしまいます。

しかも、IEAの報告は生産量について言及しているだけということにも,日本のようなアブラ輸入国のメディアは注視しなければなりません。毎年、「日産3.5百万バレルの新しい生産」がなければ世界の安定生産は維持できない。しかし,アブラ輸入国のメディアが注視しなければならないのは,仮にそれだけの増産が達成されたにしてもそれがすべて国際市場に出回るとは限らないという点です。原油マネーで潤うロシアやサウジなどの産油国では国内消費が増加しており、こんな調子で産油国の経済成長が続けば、アブラが国際市場に出回る量はどんどん減っていきます。

ウォール・ストリート・ジャーナルはIEAが「どんどん悲観的になり、ピーク論者と変わらなくなっている」と伝えています。日本のマスコミはいつになったらピークに気がつくのでしょうか。